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ニュース・トレンド 2025.09.16

国交省の中間整理で何が変わる?不動産クラファンの新しい方向性を読み解く

2025年8月1日、国土交通省は「一般投資家の参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあり方についての中間整理」を公表しました。

今回の公表内容は、インターネット経由で少額から参加できる不動産クラウドファンディングの急拡大を背景に、投資家保護の観点から制度のあり方が再整理されたものです。

特に、一部の不動産クラウドファンディング事業者による不適切な運営や情報開示不足が問題化したこともあり、「透明性」「公正性」「監督強化」に焦点があてられています。本記事では、その中間整理の背景と方向性をわかりやすく解説し、投資家がチェックすべき実務的なポイントを整理します。

不動産クラウドファンディングの広がりと課題

不動産クラウドファンディングは、ファンドの事業者が複数の投資家から資金を集めて不動産を取得・運用し、その収益を分配する仕組みです。少額から投資でき、運用の手間も少ないため、投資初心者にも不動産投資の門戸が開かれました。

しかし、市場の急拡大とともに様々な課題も顕在化しました。中でも問題とされたのは次の点です。

  • 不透明な利回り表示:高利回りをうたうものの、その前提や計算根拠が明確に示されない。
  • 不動産取得価格の妥当性:対象不動産の取得価格の妥当性が投資家に説明されていない。
  • 利害関係人取引:グループ会社間の取引にもかかわらず、取引価格について鑑定評価等の客観性ある価格が示されていない。
  • 運用中の情報提供不足:投資家から集めた資金の使途や開発案件における開発進捗状況が十分に報告されず、投資家が状況を把握できない。

こうした課題は、投資家の信頼を損ない、市場の持続的な発展を妨げかねません。

中間整理が示した4つの方向性

今回の中間整理では、こうした課題を解決し、投資家が納得して投資できる市場を整えるための4つの方向性が示されました。

(1)情報開示の充実

これまで「利回り○%」という数字だけが強調され、その前提や計算根拠が不透明なケースが少なくありませんでした。中間整理では、利回り算定の根拠を明示することが求められています。また、対象不動産の取得価格の妥当性について、特に利害関係人取引の場合は、客観的な評価を示しつつ説明することが求められています。運用期間中も出資金の使途や開発・改修の進捗状況などを定期的に開示し、投資家が投資後も状況を把握できるようにすることが重視されています。

こうした情報提供が充実すれば、投資家は「見かけの利回り」だけでなく、想定利回りの前提条件の確からしさを判断したうえで投資できます。言い換えれば、利回りが現実的かどうかを自分の目で検証できるようになる、ということです。

(2)売却価格の公正性の確保

ファンド償還時の対象不動産の売却においても、運営会社のグループ会社などの利害関係人に対して価格決定の裏付けのない不透明な価格で売却され、投資家が不利益を被る懸念がありました。これを防ぐため、中間整理では不動産鑑定評価額に基づいた価格を原則とする方針が示されています。

対象不動産の売却価格は投資家が最終的に受け取るリターンを左右します。そのため、この価格が公正であるか否かは、非常に重要なポイントになります。

(3)行政による監督の充実

ファンド事業者による不適切な運営体制を正すために、今後は調査項目を拡充し、利害関係人取引や運用実績を網羅的に把握する体制が整えられます。さらに国と都道府県が連携し、立入検査や技術的助言を通じて事前・予防的に監督を行うことが打ち出されています。

調査結果を監督に活かすことで、問題が大きくなる前に是正されやすくなり、投資家にとっても安心感が高まります。

(4)業界団体による自主ルールの検討

商品の内容に応じた適切な情報提供に取り組むことが重要であることから、業界団体が中心となって自主ルールを設けることも提案されています。広告や情報提供のあり方など、現場に即したルール作りを通じて、行政と業界が二重の安全網を築く形です。

制度改正は、往々にして時間がかかるものです。業界団体による自主ルールの整備には、制度改正を待たずに迅速にルールが整えられる利点があります。しかしながら、業界団体への加盟は任意であり、参加事業者はまだ一部に限られます。今後の発展に期待したいところです。

投資家が意識すべき確認ポイント

中間整理で示された制度的な方向性を、自身の投資判断に活かすことに置き換えると、以下の点を意識することが重要ではないでしょうか 。

  • 想定利回りの根拠
    想定利回りを見る場合、表面的な数字だけでなく、その根拠や前提条件が明示されているかを確認する。前提が楽観的すぎると、実際の収益は下振れする可能性があります。根拠が開示されていれば、自分の相場観で検証することもできます。
  • 不動産取得価格の妥当性
    鑑定評価や市場における取引価格等と比較する情報が示されているかを確認する。価格が不透明な案件は、投資家が割高な不動産に投資するリスクがあります。根拠が客観的で多面的であるほど、価格の信頼性は高まります。
  • 運用中の情報開示
    開発型のファンドは特に、投資の運用が「始まってから」が本番です。 資金の使途や工事の進捗状況が定期的に報告される予定があるかをあらかじめチェックすることで、ファンドの事業者の運営姿勢を評価する。定期的に運用状況の情報開示がある先であれば、償還予定日の直前になってから償還遅延の連絡が来るようなことは少ないかと思われます。運用報告がしっかりしている事業者は、信頼できる投資先であると評価できるでしょう。
  • 売却時の価格の透明性
    対象不動産の売却価格は投資家へのリターンに直結します。不動産鑑定評価額を下回らない適正な価格で売却されること、利害関係者への不自然な条件での売却がないことは、投資家が損をしないための最重要ポイントの一つです。
  • 中間整理に対する事業者の対応
    中間整理において示された方向性に対して、事業者自身が情報開示体制の強化等に取り組んでいるかを確認する。こうした姿勢を持つ事業者を選ぶことで、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

まとめ

国土交通省による今回の中間整理は、不動産クラウドファンディングを含む不動産特定共同事業を「より透明で、公正で、安心できる市場」に進化させるための重要な一歩です。その背景には、一般投資家の急増とこれまでの不透明な運営によるトラブルがありました。 これから不動産クラウドファンディングへの投資を検討される方は、「表面的な利回り」だけに惑わされず、その根拠や蓋然性を確認することが不可欠です。算定根拠、取得価格、運用状況、売却条件、そして事業者の姿勢等を丁寧にチェックすることが重要なポイントとなります。

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
この記事を書いた人

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部

金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。

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