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初心者向け 2024.08.01

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式とは?おさえておきたい投資家のリスク回避の仕組み

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式とは、不動産クラウドファンディングに投資をした人の損失リスクを抑えるための仕組みの1つです。

不動産クラウドファンディングでは、国から許可を受けた不動産クラウドファンディング事業者が不動産の運用や管理を行いますが、場合によっては不動産価格の下落などで元本割れする可能性もあります。

優先劣後方式は元本割れリスクから投資家を守るための仕組みとして導入されているものです。(この他にも第3号事業者による特例事業(SPC)によって、投資家を第3号事業者の倒産から隔離する仕組みも存在します。)

この記事では、不動産クラウドファンディングに投資をするときに必ず理解しておきたい、「優先劣後方式」の仕組みやメリットデメリットについて、くわしく解説します。

不動産クラウドファンディングとは?

不動産クラウドファンディングとは、本来であればまとまった投資資金が必要となる不動産への投資を、少額から行うことができる仕組みです。

不動産クラウドファンディングでは、インターネットを通じて数万円から収益不動産に投資をすることが可能です。また、不動産クラウドファンディングのファンドそのものを「不動産クラウドファンディング」と呼ぶこともあります。

不動産クラウドファンディングでは、まず不動産クラウドファンディング事業者が投資家から資金を集め、その資金で不動産の取得や賃貸を行って不動産運用をします。そして、投資家はその不動産運用で出た利益を「分配金」として受け取ることが可能です。

不動産を実際に運用する不動産クラウドファンディング事業者は、不動産特定共同事業法に基づいた国の許可や登録を取得しています。許可や登録を得るには資本金などさまざまな条件をクリアする必要があることから、不動産クラウドファンディング事業者は一定の信頼性があると判断できます。

このように、不動産クラウドファンディングは信頼性が高い事業者に不動産の運用を委託し、得られた運用益を分配金として受け取ることができる、人気が高い不動産投資手法のひとつとなっています。

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式とは?

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式とは、投資家の資金の元本割れリスクを低くするための仕組みです。優先劣後方式は、ファンドを組み立てる際の金融テクニックで、不動産クラウドファンディングでもよく用いられる手法となっています。

不動産クラウドファンディングでは、投資した不動産の運用益を「分配金」として受け取ることができますが、運用損失が出る可能性もゼロではありません。

例えば、投資した不動産価格が取得価格よりも下落した場合、売却時に損失が出る可能性があります。また、賃貸不動産で空室率が高くなった場合、当初見込んでいたような収益が上がらず、運用益が少なくなることも考えられます。

優先劣後方式を採用しているファンドでは、もしも運用損が出た場合は、不動産クラウドファンディング事業者の出資分から一定の損失までをカバーする仕組みです。

不動産運用で何らかの損失が出ても、まずは事業者の出資分から補填することから、投資家の元本割れリスクを抑えることが可能となっています。また、当初見込みよりも運用益が少なくなった場合も、投資家は利益を優先的に分配される権利があるため、利益を確保しやすくなっています。

このように、元本割れリスクを抑えられること、運用益を確保しやすいことが優先劣後方式の特徴となっています。

優先劣後方式の仕組み

優先劣後方式は、投資家の出資金と不動産クラウドファンディング事業者の出資金を分けて取扱い、ファンドに損失が生じたときには事業者分の資金からまず補填することとなっています。それでは、くわしい仕組みについてみていきましょう。

優先出資分と劣後出資分

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式では、クラウドファンディング事業者も投資家と同様に一定の出資を行います。そして、投資家の資金を「優先出資」、事業者の資金を「劣後出資」として分けて管理します。

この場合、投資家は「優先出資者」、不動産クラウドファンディング事業者は「劣後出資者」となります。

優先出資者は、利益を優先的に分配される権利があるため、何らかの理由により運用益が少なくなった場合でも、優先出資者に優先的に分配されます。また、償還時も同様に、優先出資者に優先的に償還されることとなっています。

取得した収益不動産価格が下落して売却時に損失が発生した場合でも、損失分はまず劣後出資者である事業者の出資分が負担します。そのため、損失が劣後出資分の金額におさまった場合は、投資家の優先出資分の資金が減ることはありません。

劣後出資者の投資金全額を使っても損失がカバーできない場合、はじめて優先出資者の元本が減少する仕組みです。

優先劣後の出資割合は、ファンドによって異なるため、投資をするときには条件をしっかりと確認することが大切です。

優先劣後割合のシミュレーション

優先劣後方式をより理解するために、不動産取得費用の総額が1億円で、優先劣後の比率が「優先割合80%:劣後割合20%」の場合のシミュレーションを考えてみましょう。

この場合は、投資家から集める優先出資分の資金が8,000万円、不動産クラウドファンディング事業者の劣後出資分が2,000万円ということになります。

もしも不動産運用で2,000万円の損失が出た場合、まずは劣後出資分を使って補填をします。損失額は劣後出資分である2,000万円にぎりぎりおさまっているため、投資家の資金が元本割れすることはありません。

しかし、3,000万円の損失が出た場合は、2,000万円を超えた額である「1,000万円分の損失」を、投資家が負うかたちになります。

このように、不動産クラウドファンディング事業者の劣後出資割合によって、投資家のリスク度合いが変わります。優先劣後方式のファンドに出資するときには、優先出資と劣後出資の割合をしっかりと確認するようにしましょう。

優先劣後方式のメリット

優先劣後方式のメリットは、以下の3点です。

  • 投資家の資金が元本割れしにくい
  • 分配金を確保しやすい
  • 投資家と不動産クラウドファンディング事業者が共同出資するため、利益相反が生じにくい

それでは、3つのメリットについてくわしく解説します。

投資家の資金が元本割れしにくい

優先劣後方式を採用しているファンドでは、損失が出た場合は不動産クラウドファンディング事業者の劣後出資分から補填します。そのため、投資家の資金が元本割れしにくいというメリットがあります。

不動産クラウドファンディング事業者の劣後出資割合が高ければ高いほど、投資家の優先出資分が守られる可能性が高くなりますが、その割合はファンドによって異なります。

一般的な優先劣後比率は8:2や7:3が多くなっていますが、投資をするときにはそれぞれのファンドの条件をしっかりと確認するようにしましょう。

分配金を確保しやすい

優先劣後方式では、空室率が高くなったり、コストである不動産管理費用がかさんだりして利益が当初見込みより少なくなった場合でも、優先出資者である投資家に優先的に分配される仕組みです。

また、満期時の償還においても、優先出資分である投資家の資金が優先的に償還されるため、元本割れリスクは少なくなっています。

投資家と不動産クラウドファンディング事業者の利益相反が生じにくい

優先劣後方式では、投資家と不動産クラウドファンディング事業者が共同出資をするため、利益相反が生じにくいこともメリットです。

投資家の損失が事業者の利益になる場合、運用が雑になるなどして、投資家に不利な運用がなされないとも限りません。

しかし、優先劣後方式では、運用損が出るとまずは事業者の出資金から補わなければならないため、事業者も損が出ないように全力で運用を行います。いわゆる「セイム・ボート」方式です。

このように、投資家と事業者が同じ方向を向いて運用ができるところも優先劣後方式のメリットといえます。

優先劣後方式における注意点

優先劣後方式は投資家にとってメリットが多いものの、注意点もあります。不動産クラウドファンディングへの投資を検討している場合は、優先劣後方式のデメリットもよく理解しておくことが大切です。

それでは、優先劣後方式のデメリットや注意点について解説します。

優先劣後割合はファンドごとに異なる

優先劣後割合、つまり投資家と不動産クラウドファンディング事業者の出資割合はファンドによって違いがあります。事業者の劣後割合が大きければ大きいほど、投資家のリスクは低くなるため、優先劣後割合をしっかりと確認することが大切です。

もしも、事業者の劣後出資割合よりも大きな損失額が出た場合は、投資家の資金が元本割れする可能性があるということをよく理解しておく必要があります。

どれくらいの割合を劣後出資するのかということは、不動産クラウドファンディング事業者が自由に決めて良いこととなっています。優先劣後方式を採用していても劣後出資割合が少ない場合は、わずかな損失でも投資家の投資元本が毀損される場合があるため、注意しましょう。

投資家の出資枠が少なくなる

優先劣後方式では、出資枠を「投資家」と「不動産クラウドファンディング事業者」で分け合うことになります。もしも事業者の劣後出資分が1割であれば、残り9割は投資家の優先出資分となります。また、事業者の劣後出資分が4割であれば、投資家の投資枠は6割にとどまってしまいます。

劣後出資割合が大きいと、投資家の優先出資枠が少なくなって競争率が高くなり、希望通りの投資ができないこともあります。

事業者の劣後出資分が多いと投資家の元本割れリスクは低くなるものの、競争率が高くなり、投資チャンスが減るということがデメリットのひとつといえます。

優先劣後方式を採用していないファンドもある

優先劣後方式は投資家の資金を守り、投資リスクを低減させるための仕組みですが、この優先劣後方式を採用していない不動産クラウドファンディング事業者もあります。

優先劣後方式があるかどうかは事業者の方針によります。そのため、優先劣後方式を採用しているファンドに投資をしたいときには、優先劣後方式の有無をしっかりと確認することが大切です。

ただ、優先劣後方式は、投資家のリスクを低減するための方法のひとつであり、投資家のリスクを抑える方法はこれだけではありません。マスターリース契約など、優先劣後方式以外にも投資家のリスクを下げる方法があり、それらを採用しているファンドもあります。

不動産クラウドファンディングに投資をするときには、投資家のリスク低減のためにどのような方策を取り入れているのかを確認し、自分の考えに合ったファンドに投資をするようにしましょう。

まとめ

不動産クラウドファンディングの優先劣後方式は、投資家資金のリスクを低くする仕組みです。投資家の出資分を「優先出資」、事業者の出資分を「劣後出資」として分けて管理し、不動産運用で損失が出たときには劣後出資分から補填をするため、投資家の資金の元本割れリスクを減らすことができます。また、投資家は優先的に分配される権利があるため、運用益を確保しやすいことも特徴です。

不動産クラウドファンディングに投資をするときには、投資家のリスクを減らす仕組みである「優先劣後方式」を採用しているファンドを、ぜひチェックしてみてください。

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
この記事を書いた人

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部

金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。

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