アーリーリタイアとは?現実的にいくら必要?失敗せずに生活するためのポイントを解説
LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部です。
耳にする機会はあるけれどアーリーリタイアとは、具体的にどのようなことを意味するのかよくわからないという人もいらっしゃるでしょう。そこでこの記事では、アーリーリタイアとは何かをわかりやすく解説します。アーリーリタイアの基礎知識を始め、メリット・デメリット、実現のための資金の目安、失敗しないための4つのポイントなどについて理解できます。
今後の人生設計を検討していて、アーリーリタイアに興味がある方はぜひ参考にしてください。
アーリーリタイアとは?
まず、アーリーリタイアとは何か、似た言葉であるセミリタイアやFIREとの違いについて解説します。
アーリーリタイアとは定年前に仕事を辞めること
アーリーリタイアとは、定年退職の年齢を待たない早期の退職や引退を意味する言葉です。アーリーリタイアは、早期退職を意味する「early retirement」という英語に由来する和製英語。早期リタイアという言葉も同様の意味で使われます。
日本では、高度経済成長期を機に雇用と労働の安定性を重視した終身雇用制度が多くの企業で定着しました。それにより、60歳や65歳の企業が定めた定年まで働くことが一般的になったのです。しかし、現代では長引く日本経済の低迷や働き方改革の推進により、さまざまな働き方に対する価値観が生まれてきています。人生の大半を仕事に費やすのではなく、それ以外のことに自由な時間を使いたいと考える人が増えたことが、アーリーリタイアが注目を集めている理由です。
アーリーリタイアとセミリタイアの違い
アーリーリタイアとセミリタイアの違いは、「働いて賃金を得るか」どうかという点が異なります。わかりやすく言うと、セミリタイアはやや引退した状態。アルバイト・パート・フリーランスといった方法で一定の収入を得て生活をします。収入がある程度得られることで必要となる資産が少なくて済むため、完全に引退するアーリーリタイアと比較すると実現のハードルは低いです。
注目を集める「FIRE」という考え方
FIREという考え方も、アーリーリタイアに対する関心の高まりによって注目を集めています。FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の頭文字を取った言葉です。経済的に自立した状態で早期リタイアを行うという考え方です。FIREでは、生活費は投資による運用益によってまかないます。FIREを実現するための基本的なポイントは、年間支出の25倍の資産を形成し、投資元本の4%以内に抑えることです。
FIREは、アメリカで生まれた考え方で、日本でも20代・30代を中心に目標とする方が増えています。
アーリーリタイアのメリット・デメリット
アーリーリタイアを考えている方向けに、以下で理解しておきたいメリットとデメリットについて解説します。
アーリーリタイアのメリット
まず、自由な時間の獲得・仕事のストレスからの解放・場所に縛られないといったアーリーリタイアのメリットについて見ていきましょう。
自由な時間が獲得できる
アーリーリタイアの大きなメリットは、自由に使える時間が確保できること。趣味や自分磨きなど、新しいことにチャレンジしやすくなります。あるいは、仕事に追われず、何もせずにゆっくりと過ごすことも可能です。仕事による制限がなくなるので、自分の好きなように使える時間が確保できます。
仕事によるストレスから解放される
アーリーリタイアによって会社を辞めると、仕事によるストレスから解放されます。働いてると気付きづらいですが、じつは仕事によるストレスは多岐に渡るもの。タスクの消化・マネジメントの責任・人間関係・通勤・出勤時間に対するプレッシャーなど、仕事には多くのストレスが伴います。
アーリーリタイアにより、そのような仕事による時間や責任に対するストレスから解放され、穏やかな生活が獲得できることは魅力的な点と言えるでしょう。
住む場所を自由に選べる
アーリーリタイアによって仕事から離れることで通勤の必要がなくなるため、住む場所も自由に選べるようになります。仕事の関係で、都心部を離れることが難しいという場合もあるでしょう。アーリーリタイアを実現すればそのような制限がなくなるため、都会の喧騒から離れた静かな場所で余生を過ごすという選択もできます。
アーリーリタイアのデメリット
アーリーリタイアには、魅力的なメリットが多くあります。一方で、キャリアが止まる・収入がなくなる・孤独を感じやすい・時間を持て余すなどのデメリットもあることを覚えておきましょう。以下で、それぞれのデメリットについて解説します。
キャリアがストップする
アーリーリタイアにより、これまで積み上げてきたキャリアはストップします。それにより、万が一仕事に復帰したいと考えた場合には、選べる選択肢は少なくなるでしょう。アーリーリタイアをした後にも、自己研鑽の時間を確保し、スキルを伸ばすことでこのようなリスクを軽減できます。
仕事による収入がなくなる
アーリーリタイアによって引退した場合には、当然ですが仕事による収入はなくなります。収入がなくなっても生活費をまかなえる充分な蓄えが、アーリーリタイアには必要不可欠です。また、生活費だけでなく病気・事故・介護・災害などで、突発的な出費が発生するケースも考えられます。収入がなくなることに不安を感じる場合には、投資による運用益の獲得や一定の収入を得るセミリタイアを選択肢として考えるとよいでしょう。
孤独を感じる場合がある
アーリーリタイアによって会社で働くことがなくなると、孤独を感じる場合もあります。同僚や取引先の方とのやりとりがなくなるため、必然的に社会との接点が少なくなります。そのため、人によっては孤独を感じて寂しくなる場合もあるでしょう。事前にアーリーリタイア後にどのように生活を送るか考えておくと、このようなデメリットをケアできます。
やることがなくて時間を持て余す
アーリーリタイアによって得られる自由な時間を持て余し、「やることがない」と退屈を感じる可能性もあります。日々の仕事に追われていると、「時間がほしい」と漠然と考えることもあるでしょう。しかし、実際に自由な時間ができると「何をやればよいのかわからない」と悩む方も少なくありません。
忙しい生活を送っているとネガティブな要素の解決に目が向きがちですが、アーリーリタイア後に具体的に何をするかといったポジティブな将来に対するプランニングも重要です。
アーリーリタイアのために必要な資金の目安
アーリーリタイアに必要な資金の目安について以下の表にまとめました。
年代別平均 生活費・合計 | 30歳から88歳までに 必要な生活費の目安 | 40歳から88歳までに必要な生活費の目安 | 50歳から88歳までに必要な生活費の目安 |
---|---|---|---|
30代の平均生活費(月額) | ¥268,600 | ¥268,600 | ¥268,600 |
30代の平均生活費(年額) | ¥32,232,000 | ¥0 | ¥0 |
40代の平均生活費(月額) | ¥317,700 | ¥317,700 | ¥317,700 |
40代の平均生活費(年額) | ¥38,124,000 | ¥38,124,000 | ¥0 |
50代の平均生活費(月額) | ¥338,600 | ¥338,600 | ¥338,600 |
50代の平均生活費(年額) | ¥40,632,000 | ¥40,632,000 | ¥40,632,000 |
60代の平均生活費(月額) | ¥293,900 | ¥293,900 | ¥293,900 |
60代の平均生活費(年額) | ¥17,634,000 | ¥17,634,000 | ¥17,634,000 |
66歳以降の無職世帯の平均生活費(月額) | ¥256,000 | ¥256,000 | ¥256,000 |
66歳から88歳までの平均生活費(年額) | ¥70,656,000 | ¥70,656,000 | ¥70,656,000 |
合計 | ¥199,278,000 | ¥167,046,000 | ¥128,922,000 |
前提として寿命は、男性よりも長い女性の平均寿命とします。2020年の日本の平均寿命は男性が81.64歳で、女性が87.74歳です。また、解説する資金のシミュレーションはあくまでも目安。生活のスタイルや家族構成によって必要な資金は増減しますので、年齢ごとにアーリーリタイアに必要となる資金の参考情報としてご活用ください。
30代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安
30代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安は、約1億9900万円です。2億円に近い数値ですので、そのハードルの高さがよくわかります。
30代は結婚や出産といったライフステージの変化が起こりやすい世代であることを考えると、この資金は最低限と考える必要があるでしょう。また、アーリーリタイアによって、厚生年金から得られる年金支給額が減少する点にも注意が必要です。
40代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安
40代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安は、約1億6700万円です。40代は、子育ての最中というご家庭も多いでしょう。加齢により病気やケガによるリスクも高まりますので、余裕を持った資金形成を行うことが望ましいです。
50代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安
50代でのアーリーリタイアに必要な資金の目安は、約1億2800万円。子育ても一段落して、趣味などに時間やお金をかけたいという場合にはより多くの資産が必要です。
どの年代にしてもアーリーリタイア後にどのような暮らしを送りたいかによって、必要な資金は大きく変わります。上述の目安だけでアーリーリタイアを決めるだけでは不十分。どのような生活を送りたいか、そのためにはどれだけの生活費が必要かといったことを慎重に検討することが、アーリーリタイアの成功の秘訣です。
アーリーリタイアに失敗しないための4つのポイント
後悔しないアーリーリタイアを実現するためには、事前の準備やプランニングがとても重要です。以下で、アーリーリタイアで失敗しないための4つのポイントについて解説します。
アーリーリタイア後のプランを立てる
アーリーリタイア後にどのような生活を送りたいのかを考えて、将来のプランを立てましょう。
アーリーリタイアの実現には、その後の生涯に必要となる資産を形成する必要があります。必要となる金額を計算するために、まずはアーリーリタイア後の人生のプランを立ててください。毎月の生活費の設定金額、旅行の頻度、ライフステージの変化への考慮によって、必要となる資産は大きく異なります。
また、アーリーリタイアによって年金額が低くなる点にも注意が必要です。会社で働く期間が短くなれば、厚生年金による支給額は減少します。ねんきんネットなどのサービスを利用すれば、将来受け取れる年金額をシミュレーションできるので、必ず確認しておきましょう。
寿命年齢までの収入・支出を計算する
将来のプランが立てられたら、次に平均的な寿命年齢までの収入と支出を計算しましょう。
失敗しないアーリーリタイアを迎えるためには、上述のシミュレーションのようにざっくりとした金額を算出するだけでは不十分です。まず、貯金額や収入といった現在の状況を整理します。その上で、1年ごとに現在から寿命を迎えるまでのキャッシュフローの想定をまとめましょう。
貯金や投資によって資産形成に取り組む
アーリーリタイアの計画が立てられたら、実行するための資産形成に取り組みます。現在の収入からの貯金だけではなく投資を行って資産形成を目指す場合もあるでしょう。その際は、年齢に対する目標金額から逆算して、計画的に資産運用を行うことが重要です。
アーリーリタイア後の収入源を確保する
アーリーリタイア後も安心できる暮らしを送りたいのであれば、収入源を確保することをおすすめします。これは厳密な意味では、アーリーリタイアとは呼べないかもしれません。ただし、生涯に渡って安定した暮らしを求めるのであれば、収入源を確保しておくことが現実的です。
資産形成の段階で運用に回せる資金を確保しておき、その運用益によって生活費をまかなえれば資産を目減りさせずに生活ができるでしょう。あるいは、関心や興味のあることのスキルを身に付け、フリーランスである程度収入を得るという方法もあります。
アーリーリタイアにはいくら必要か計算して準備を始めよう
アーリーリタイアの実現を目指すのであれば、必要な資金を計算して今すぐ準備を始めましょう。
アーリーリタイアに必要な資金は、独身や夫婦などの家族構成、目標とする年代によって大きく異なります。まずは、ライフプランを考えて試算を行い、具体的に必要な金額を理解することが重要です。そして、目標が定まった場合には、資産形成に向けてアクションを起こしましょう。
少ない資金でリスクを抑えて安定した利益を得たい場合には、投資信託を利用した積立投資が基本です。その中で株や債券だけでなく、不動産にも資産を振り分ける際には不動産クラウドファンディングという選択肢もあります。
多くの資金が必要となるアーリーリタイアを目指すのであれば、早期に資産形成に取り組むことがとても大切です。アーリーリタイアの計画を立てたら、しっかりとすぐに行動に移しましょう。
【監修者】CFP資格保有者 宮脇英寿
中学高校の数学教師を経てファイナンシャルプランナーの道に進む。年間100世帯以上の個別相談に対応しながら、確定拠出年金や住宅ローン、ねんきん定期便の見かた等各種セミナー講師も担当。住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士の資格も保持。
LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。