そもそも「ファンド審査」って何をしているの?審査担当の小山さんに聞いてみた

LIFULL 不動産クラウドファンディングは、LIFULL Investment(以下、「当社」)によるファンド審査を通過したファンドのみを取り扱う投資プラットフォームです。
本プラットフォームにおけるファンドの募集は、当社が運営事業者から委託を受けてファンド募集の取扱いを行いますが、その際には当社が客観的な視点から検証した審査結果を投資家に公開しています。
この審査結果には、投資家が投資判断をする際に押さえておくべき重要なリスクの内容が含まれています。
今回はLIFULL Investmentが実施しているファンド審査の内容について、審査担当である業務管理者 小山直美さんに、編集担当が詳しく話を聞きました。
登場人物紹介


Q1. そもそも「ファンド審査」とは何をしているんでしょうか?

小山さん:
当社のファンド審査は、投資家の皆様にファンドを提供する前に実施している、とても重要なプロセスです。まずはファンドの運営主体となる、運営事業者の審査を行います。事業者審査においては、法令に基づく許認可の内容、直近3期分の財務及び業績の状況、過去のファンド運用実績、そして、事業責任者や代表者との面談を通して経営方針などを確認しています。そのうえで運営事業者が企図するファンドのプロジェクト審査を行い、出口戦略を含む事業計画や運営体制、利害関係者取引の管理体制などを多角的に検証しています。この二段構えの審査により、信頼できるファンドを投資家に提供できるように努めています。さらに、これらの審査結果をもとに、社内の審査委員会が審議を行い、そこで承認されることにより、LIFULL 不動産クラウドファンディング上での募集を取り扱うことができるようになります。
編集担当:
二段構えでの審査なんですね!まず、事業者審査で重視していることは何ですか?
小山さん:
運営事業者に関して、財務基盤の健全性やファンドの運用能力の確認は欠かせません。不動産クラウドファンディングは「不動産特定共同事業法」(以下、「不特法」)という法律での許認可がないと事業を行えませんが、許認可があるからといって、経営の見通しが不安定であったり、社内に不動産ファンドを運用した経験のあるメンバーがいなければ、ファンド運営能力に不安が残ります。ファンドにおいては、運営事業者の信頼度はファンド自体の信頼度に直結します。そのため、当社の審査では財務や遵法性にとどまらず、様々な角度からチェックします。
編集担当:
プロジェクト審査では何を確認しているのでしょうか?
小山さん:
主に事業計画が適切であるか、資金使途が明確で適正か、運営体制が整備されているかを確認しています。さらに、想定されるリスクへの対応策が具体的で実行可能かも重要なポイントです。例えば、予期せぬ市場変動や自然災害が発生した場合にどう対処するのか、保険でカバーされるのか、他の出口の選択肢を持っているのかなどについて、提出された資料を確認しつつ、運営事業者と質疑応答を繰り返します。
Q2. ファンド審査ではどのような資料を確認しているのでしょうか?

小山さん:
まずは直近3期分の決算書、組織体制図、監督官庁に提出している業務方法書など、事業者審査に必要な資料を提出していただきます。例えば決算書では、業績に加えて、自己資本比率や負債比率、営業キャッシュフローの推移などを確認し、長期的に安定した事業運営が可能な事業者であるかを見極めます。これらの資料は、運営事業者の「信用の履歴書」ともいえるもので、全体像を客観的に評価する基礎データとなります。その次に、投資対象となるプロジェクト関連の資料を確認します。
編集担当:
プロジェクト関連資料は何を確認しているのですか?
小山さん:
物件を特定する情報やファンドで調達する資金の使途にかかる費用見積もりなどはもちろん、売り手やその関係者が反社会的勢力と関係していないかの調査もします。こうしたバックグラウンドチェックは、契約締結後に想定外のリスクが発覚するのを防ぐために必須です。案件の魅力以前に、ファンドの信頼性と安全性を確保することが第一です。必要に応じ、所在する場所に実際に赴き、現地調査も行っています。
編集担当:
現地調査も行っているんですね!
小山さん:
開発案件やリスクが高いと思われる案件では必ず実施します。現地調査においては、図面や物件概要書と現況の一致を確認し、劣化状況、法令遵守、周辺環境なども細かくチェックします。駅までの実際の徒歩時間や道の安全性、周囲の生活環境まで確認します。現地でしか得られない情報は多く、判断に欠かせません。
Q3. 最終判断が行われる審査委員会とはどういうものでしょうか?

小山さん:
審査委員会は、ここまでお話しした数々の事前審査を通過した案件の取扱いの可否を最終的に判断する会議体で、審査委員会の承認が得られない限り、ファンドの取扱いはできません。この会議体には金融や不動産業界において30年以上の業務経験がある社外取締役や、外部専門家として第三者の弁護士が参加し、ファンド審査の内容の検証に加えて、法令遵守や契約条件の妥当性等について客観的に確認します。社外の意見が入ることで、より公平で透明性の高いチェックが可能となります。
編集担当:
審査委員会において、特に重要視されるポイントはどのようなものですか?
小山さん:
ファンドの運営事業者自体に問題がないこと、事業計画の実現可能性に問題がないこと、利害関係者取引が適切に管理されていることの3点です。これらをすべて満たしていなければ承認されることはありません。すべてを満たすには多くの裏付けが必要です。
編集担当:
承認されない場合はどうなるのでしょうか?
小山さん:
追加調査等の条件付きで承認されることもありますが、最終的に付帯条件を満たせない場合にはファンドの公開を見送ります。場合によっては、運営事業者に事業計画を見直す提案を行うこともあります。審査委員会の判断基準は、投資家の保護が適切に確保されているかです。
Q4. 最後に、小山さんが審査で最も大切にしていることは何でしょうか?

小山さん:
先入観を持たず、常に客観的な視線で判断することです。すでに実績がある事業者であっても、一から事実を積み重ねて確認し、先入観に流されないようにします。客観的な姿勢こそが、精度の高い審査につながります。
編集担当:
なぜ客観性が重要なのでしょうか?
小山さん:
一般的に、人は好意的な印象を抱いたものに対して判断が甘くなりがちですが、それでは投資にあたってのリスクを見逃す危険があります。客観的に事実に基づく判断を行うことは、投資家の安全を守るための必須条件です。LIFULL 不動産クラウドファンディングでは、ファンドを運営する事業者から委託を受けて、当社が募集の取扱いを行うため、客観性は当社自身に対する投資家からの信頼を保つためにも欠かせません。
編集担当:
客観性を保つために何か工夫されていることはありますか?
小山さん:
複数担当者によるクロスチェックで判断の偏りを防ぐように努めています。また、疑問点が出れば、その都度運営事業者と質疑応答を行い、あいまいな部分を残さないように努めます。運営事業者側の協力なくしては成り立たない共同作業になりますが、こうした努力の積み重ねにより、ひとつひとつのファンドの信頼性が高まれば、長期的にLIFULL不動産クラウドファンディングへの投資家からの信頼の獲得につながると考えています。
編集後記
小山さんの話から、LIFULL 不動産クラウドファンディングのファンドが世に出るまでには、事業者審査とプロジェクト審査の二段構えのファンド審査、裏付け資料の検証、必要に応じた現地調査、そして外部専門家を含む審査委員会での最終判断という厳密な工程があることが分かりました。
これらはすべて、投資家からの信頼を得るための「見えない努力」です。案件の魅力はもちろん大切ですが、その裏にある厳格な審査のプロセスこそが、このサービスの最大の特徴だと感じました。

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。