【最新動向】日銀の利上げがもたらす不動産クラウドファンディング投資への影響

2025年1月23日・24日の金融政策決定会合にて、日本銀行(日銀)は0.25%の追加利上げを決定し、政策金利は0.5%と17年ぶりの高水準となりました。日銀による経済や物価の見通しが実現するとすれば、今後さらなる利上げが行われる方向性が示され、長期間続いた超低金利政策の転換点を迎えています。今回の動きは、住宅ローンや企業の資金調達だけでなく、不動産投資全般に大きな影響を及ぼす可能性があります。本記事では、金利上昇が不動産市場やJ-REIT、そして注目の不動産クラウドファンディングにどのような影響を与えるのかを詳しく解説いたします。
1. 日銀の追加利上げと今後の見通し
【日銀の政策目標と追加利上げの背景】
日銀の政策目標は「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」であり、具体的な数値目標としては消費者物価の前年比2%上昇が掲げられています。
近年、日本の高齢化による人件費の上昇や、円安を背景に原材料価格・物流コストが上昇し、小売価格への転嫁が進んでいます。これらの要因によって、消費者物価が目標値に近づく中、日銀は慎重ながらも追加利上げに踏み切りました。米国トランプ政権の政策や中国経済の動向といった「物価の安定」に影響を及ぼし得る外部要因には注意を払う必要があるものの、市場では2025年10月までに政策金利の再度引き上げを織り込んでいます。(出典:Bloomberg, 2025年1月24日)
【利上げがもたらす主な影響】
長いデフレ時代から脱却し、「金利がある世界」への転換は、まず、以下のような現象を通じて社会に影響を及ぼします。
- 住宅ローン金利の上昇
- 事業会社の調達コストの増加
- 預貯金金利の引き上げ
- 資産運用商品の利回り上昇
これらの変化は、個人投資家の投資や企業の資金調達行動、そして不動産市場全体に大きな波及効果をもたらすため、次のセクションでは不動産市場への具体的な影響について考察します。
2. 金利上昇が不動産市場に与える影響
【資金コストの上昇と市場の変化】
金利上昇局面では、金融機関は貸し出しスタンスを引き締め、流通する資金量が減少します。これに伴い、景気は回復期から好況期を経て、次第に後退期へとシフトしていきます。
不動産市場では、借入れコストが増加するため、購入希望者は住宅ローンの負担増に直面し、購買意欲が低下する傾向が見られます。また、借入で不動産を仕入れていた事業者や投資家は、利上げによりコストが増加すると、利益確保のために早期売却に踏み切るケースも出てきます。実際、足元でもこうした兆しが観察されています。

【マンション市場のデカップリング現象】
株式会社不動産経済研究所が発表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024年のまとめ」によれば、首都圏における2024年の新築マンション累計発売戸数は2万3,003戸となり、前年比で14.4%減少しました。一方、全体の価格水準は依然高値圏で推移しています。不動産投資ローンを利用して転売益を狙う富裕層や、円安のメリットを享受する海外投資家は東京23区内の新築高級物件に対して引き続き強い需要を示す一方、実需層は購入をあきらめるなど、市場は二極化し、契約率においては減速の兆しも見受けられます。こうした市場の動向は、今後の不動産投資戦略を考える上で重要なポイントとなります。
3. 金利上昇とJ-REITの関係
【J-REITの基本構造と株式市場との類似点】
J-REIT(上場不動産投資信託)は、取引所に上場している不動産投資法人が発行する投資証券であり、株式と同様に市場の需給や投資家の思惑に価格が左右されます。J-REITについても、金利の上昇は、一般的に不動産投資法人のコストを圧迫し、価格にネガティブな要因とされます。また、景気回復期の利上げ局面では、株式市場へ資金が流れやすく、J-REITの相対的なパフォーマンスにネガティブな影響が出ることもあります。
【金利上昇がJ-REITに与える影響と割安感】
J-REITの低迷は金利上昇以前から見られましたが、その一因として、昨年から拡大された新NISA制度により投資家が日米の株式市場へ資金をシフトした点が挙げられます。一般社団法人 不動産証券化協会によると、2024年12月時点でJ-REITの平均分配金予想利回りは5%を超えて、東証株式の平均配当利回り2%強を大きく上回っており、海外投資家によるNTT都市開発リート投資法人へのTOB(株式公開買付け)など、割安感を評価する動きも出てきました。

出所:一般社団法人 不動産証券化協会「東証REIT指数・東証株価指数(TOPIX)の推移」
4. 不動産クラウドファンディング投資におけるポイント
【不動産クラウドファンディング投資の魅力とリスク】
J-REITは流動性が高い反面、市場の需給や投資家の心理により価格変動リスクが大きいという側面があります。また、株式と同様に、償還期限がないため、換金する際には、価格変動リスクを負うことになります。これに対して、不動産クラウドファンディング投資における不動産ファンドには価格の変動がなく、また予め償還期限が設定されているため、運用する資金の性格に応じた運用期間のファンドに投資を行うことにより、ポートフォリオ分散を狙う投資手法として注目されています。
【事業投資としての不動産クラウドファンディング投資の仕組み】
不動産クラウドファンディング投資は、国交省または都道府県知事から許可を受けた宅地建物取引業者が運営するプロジェクトにオンライン上で小口投資ができる手法です。
ファンドを運営する事業者は、特定の不動産を自ら取得・保有し、賃貸収入(インカムゲイン)や売却益(キャピタルゲイン)を原資として出資者に分配を行います。投資判断を行う際は、対象不動産の内容やファンドの事業計画に加えて、ファンド事業者の経営状態や業績を十分に確認することが重要です。

【不動産クラウドファンディング投資の留意点】
金利の上昇は、銀行預金金利だけでなく、ファンド事業者の資金調達コストにも影響を及ぼしますので、投資申込前には、ファンドの内容のみならずファンド事業者の経営状況についても確認することが肝要です。主に注目すべきポイントは、以下の3点です。
- 対象不動産の評価額は適正か
ファンドの償還時の出口計画において、対象不動産の市場評価や流動性に問題はないか。 - ファンド事業者の信用力に問題はないか
経営者および業務責任者の事業に対する意識、管理能力に問題はないか。 - 利害関係人取引はあるか
ファンド事業者の利害関係人(子会社や関連会社等)との取引の有無。利害関係人取引がある場合には、適切な管理が行われているか。
【LIFULL不動産クラウドファンディングの取り組み】
LIFULL Investmentが運営する「LIFULL 不動産クラウドファンディング」では、ファンド事業者および事業内容について、上記のポイントについて第三者の立場で審査を行い、ファンド媒介の取り扱いを決定したファンドのみを紹介しています。また、審査結果は一定の基準に基づいて、サービスサイトおよび契約成立前交付書面にて公開され、投資家が出資判断を行う際の材料として提供しています。
LIFULL 不動産クラウドファンディングに興味をお持ちの方は、ぜひ下記リンクより詳細をご確認ください。
【LIFULL 不動産クラウドファンディング】
まとめ
日銀の追加利上げの影響は、個人の投資や企業の資金調達行動の変化を通じて、不動産市場全体に波及していきます。J-REITや不動産市場に不透明感が広がる中、ポートフォリオ分散の一手法として不動産クラウドファンディング投資が注目されています。各投資手法の特性やリスクを十分に理解し、ファンド事業者の健全性や市場動向を見極めた上で、今後の投資戦略を検討することが重要です。

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。