東京都心で投資するなら知っておきたい「臨海地下鉄構想」とは?

本記事はLIFULL HOME’S 不動産投資からの寄稿記事です。
「臨海地下鉄構想」の事業計画案が東京都から発表されました。この計画が実現すれば、東京駅から臨海部へアクセスしやすくなります。臨海部にとっては利便性アップにつながる計画です。東京都心で投資するなら知っておきたい、今後の臨海地下鉄構想について解説します。
臨海地下鉄構想とは
臨海地下鉄構想は急に発表されたものではありません。東京駅と臨海部をつなぐ計画は以前からあり、それらを基礎として今回の臨海地下鉄構想が公表されました。2022年11月発表の構想がどのようなものかみていきましょう。
どこからどこまでをつなぐのか
臨海地下鉄構想では、晴海地区や有明地区を「臨海部」と位置付けています。その臨海部と東京の都心部を地下鉄で結びつけるのが臨海地下鉄構想。具体的には東京駅から有明・東京ビッグサイト駅の約6.1kmの路線のことです。
途中の設置駅は
東京駅と有明・東京ビッグサイト駅の間には5つの駅が計画されています。いずれも仮称ですが、新銀座駅、新築地駅、勝どき駅、晴海駅、豊洲市場駅の5駅です。このうち都営大江戸線の駅である勝どき駅以外の駅は新設となります。
いつ頃完成?いくらかかるのか
構想によれば開業は2040年ごろの予定です。東京都の計画では20年以内に実現の見込みとなっています。概算の事業費は約4,200億円から5,100億円です。これだけ巨額の事業費を費やしても開業後30年以内に累積赤字を解消して黒字転換する予定となっています。
臨海地下鉄構想の目標
国や東京都は臨海部の開発についてこれまでにも多くの構想や計画を発表してきました。今回の臨海地下鉄構想はいきなり現れたわけではないのです。ここでは、これまでの構想を踏まえて臨海地下鉄構想の目標や効果を確認していきましょう。
基幹的な交通網の強化
東京都が2022年3月に公表した「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」によると、この臨海地下鉄構想によって新設される新路線は「区部中心部と開発が進む臨海地域とをつなぐ基幹的な交通基盤、いわば背骨としての役割」が期待されています。将来的には主要な幹線として位置付けられているのです。
国際競争力の強化
国土交通省が2016年4月に公表した「交通政策審議会答申第198号」では、新設される路線に国際競争力の強化が期待されています。都心部と臨海部をつなぐことによりアクセスが向上するためです。また、臨海部へ人が流入することによって慢性的に混雑している山手線などの都心部の路線の混雑緩和も目標とされています。
臨海部に「ヒト・モノ・カネ」を呼び込む
世界から人と投資を呼び込み、東京と日本の持続的成長を牽引することも期待されています。臨海部には東京で開催をしたイベントで使用した施設も残っています。これらの施設を有効利用し、新路線を整備することで臨海部に「ヒト・モノ・カネ」を呼び込もうとしているのです。
各駅に求められる機能
臨海地下鉄構想では始発終着駅と途中の5駅を加えた7駅が整備される計画です。これらの駅には異なる機能や目的が与えられています。それぞれの駅に期待されている役割についてみていきましょう。
東京駅・新銀座駅
東京駅や大手町駅、新銀座駅が設置予定の銀座界隈は現在でも多くのJRや地下鉄の路線が通るエリアです。これらの駅には周辺の既存路線との乗換利便性が期待されています。新路線の起点となることで山手線などの混雑緩和のための人の流れをつくる予定です。
新築地駅
新築地駅が置かれる築地周辺は、中央卸売市場が移転したことにより新たなまちづくりが模索されています。「銀座・築地周辺みどりのプロムナード構想」などが代表例です。繁華街である銀座に隣接するエリアとして、新たなアメニティ空間を創造することが期待されています。
勝どき駅
勝どき駅は都営大江戸線の駅でもあります。都営大江戸線は六本木や新宿にもつながる路線です。東京駅周辺だけでなく、六本木や新宿方面と新路線のアクセスを向上させるためにも勝どき駅は重要な結節点としての役割を担います。
晴海駅
晴海地区周辺は鉄道や地下鉄の路線がありません。鉄道空白地帯です。新路線が開通すれば、空白地帯が解消されます。晴海地区にあるのが再開発した晴海フラッグ。これを有効活用し、利便性を高めるためにも臨海地下鉄構想の実現が必要です。
豊洲市場駅と有明・東京ビッグサイト駅
豊洲エリアはその駅名が示す通り、中央卸売市場が移転してきました。有明地区も東京ビッグサイトが駅名に含まれていることからイベントなどで集客が見込まれるエリアです。都心部と結ぶことはこれらのエリアのまちづくりにもよい影響を与えることにもなります。
臨海地下鉄構想の将来的な見通し
臨海地下鉄構想は東京駅と臨海部に新路線を敷設して終了、というものではありません。一体的な開発をすることで事業費の削減も考えられています。臨海地下鉄構想の将来的な見通しについての解説です。
つくばエクスプレスとの接続
つくばエクスプレスは秋葉原からつくば市を結ぶ路線です。このつくばエクスプレスと臨海部を接続しようという計画があります。これが実現すれば、つくば市から臨海部までのアクセスが大幅に向上します。
羽田空港との接続
もう1つは羽田空港との接続です。現在、臨海部から羽田空港へ直接アクセスできる鉄道路線はありません。この計画が実現すれば国際空港と臨海部がつながることになり、日本だけでなく世界からもヒト・モノ・カネが流入することになるでしょう。
首都高速との一体的な開発
東京都では臨海地下鉄構想だけでなく、ほかにも多くの計画、構想があります。臨海地下鉄構想の新路線の一部が重複しているのは首都高速の延伸計画です。首都高速と一体開発することで事業費の圧縮が期待できます。
臨海地下鉄構想の課題
臨海地下鉄構想が構想どおりに実現すれば臨海部は大きく発展することでしょう。ただ、そのためには解決しなければならない課題もあります。それは事業主体や総事業費といった事業の根幹にかかわる部分です。臨海地下鉄構想から読み解くことができる構想自体の課題についてみていきます。
事業主体が未定
事業主体、つまりどこが主体となって事業を行うかが課題です。臨海地下鉄構想自体は東京都が策定していますが、その下地には国の構想もあり、中央区などの区の意向もあります。事業主体が決定できずに頓挫した構想も多いです。
総事業費が不透明
総事業費は約4,200億円から5,100億円とされています。これも1,000億円近い開きです。また、細かい項目は公表されていないため詳細は不明ですが、今後の動きによっては上振れする可能性もあります。限られた予算の中で構想のためにどれほどの予算を割けるのかも課題です。
開業時期が不透明
開業時期は2040年ごろとされています。ただ、リニア中央新幹線をはじめとして巨大プロジェクトが遅れることはままあることです。臨海地下鉄構想も都心部の巨大プロジェクトであるため、予定どおりに進捗していくとは限りません。
まとめ
この臨海地下鉄構想が完成すると、都心と臨海部のアクセスは向上し、東京はより発展するでしょう。つくばエクスプレスが乗り入れ、羽田空港とも接続することになれば利便性は大きく向上します。その一方で多くの課題や問題があるのも事実。東京都心部の物件へ投資することを考えるときには、こうした巨大プロジェクトの動向に注目していきましょう。

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部
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