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おすすめコラム 2023.05.09

老後の生活費の内訳は?一人暮らし、夫婦の事例をもとに解説

本記事はLIFULL HOME’S 不動産投資からの寄稿記事です。

公的年金だけでは、老後に平均的な生活をしていくことが難しいと言われています。では老後の生活費はどれくらいかかるのでしょうか?この記事では、公的調査をもとに高齢夫婦、及び高齢単身者の平均消費支出のモデルケースを紹介。平均的な公的年金額と照らし合わせて、老後に向けてどれくらい準備しておけばよいのか、おおよその金額について紹介しています。老後の生活費について不安を感じている方、老後に向けてどのような対策を立てればよいのか知りたい方は参考にしてください。

老後の生活費の内訳は?

家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)によると65歳以上の高齢者1ヶ月あたりの平均消費支出は、夫婦のみの世帯で224,436円。単身無職世帯で132,476円となっています。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯65歳以上の単身無職世帯
食費65,789円36,322円
住居16,498円13,090円
光熱・水道19,496円12,610円
家具・家事用品10,434円5,077円
被服及び履物5,041円2,940円
保健医療16,163円8,429円
交通・通信25,232円12,213円
教育2円0円
教養娯楽19,239円12,609円
その他の消費支出
(諸雑費・交際費・仕送り金)
46,542円29,185円
消費支出合計224,436円132,476円
出典: 家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)
※各項目の数値は平均値で端数があるため、各項目の合計と消費支出合計が若干異なる場合があります。

受け取れる公的年金の平均はいくら?

「厚生労働省年金局 令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度末時点での厚生年金(老齢厚生年金)受給者の平均月額は14万 6,000円※、国民年金(老齢基礎年金)受給者の平均月額は5万6,000円となっています。

これをもとに夫婦が受け取れる公的年金額を計算してみましょう。

※厚生年金受給者は国民年金も受給できるため、一般的に国民年金のみの受給者よりも年金額は大きくなります。

夫婦2人の場合

夫婦2人とも会社勤めだった場合、受け取れる公的年金額は29万2,000円、夫婦いずれかが会社勤め、一方が専業主婦(夫)の場合は20万2,000円、夫婦いずれかが個人事業主と専業主婦(夫)または、夫婦いずれも個人事業主の場合は11万2,000円になります。

【高齢夫婦2人が受け取れる概算公的年金額】

・夫婦2人とも会社勤めなら公的年金だけで生活は可能

65歳以上の夫婦のみの無職世帯の月平均消費支出は、224,436円であることから、夫婦2人とも会社勤めであれば公的年金だけで生活費がまかなえると考えられます。

・夫婦一方が会社勤め、もう一方が専業主婦(夫)の世帯は準備が必要

夫婦一方が会社勤めの場合、公的年金だけでは毎月約2万2,000円生活費が不足します。厚生労働省 令和3年簡易生命表によると平均寿命は男性で81.47歳、女性が87.57歳のため、男性の平均寿命をもとに計算をした場合、65歳以降用意しておくべき貯蓄額は約434万円、同様に女性の平均寿命をもとに計算した場合は約595万円の貯蓄額が必要です。

【夫婦一方が会社勤め、もう一方が専業主婦(夫)だった世帯が老後に必要な金額】

男性の平均寿命をもとに計算女性の平均寿命をもとに計算
老後に必要な準備額約434万円約595万円

・夫婦の両方、あるいはどちらかが個人事業主の場合は十分な準備が必要

また夫婦の両方か、どちらかが個人事業主の場合は、毎月約11万2,000円が不足する計算です。男性の平均寿命をもとに計算をすると、約2,213万円、女性の平均寿命をもとに計算をすると、約3,033万円の貯蓄額が必要です。

【夫婦の両方、あるいは一方が個人事業主やフリーランスだった世帯が老後に必要な金額】

男性の平均寿命をもとに計算女性の平均寿命をもとに計算
老後に必要な準備額約2,213万円約3,033万円

単身世帯の場合

65歳以上の単身無職世帯の月平均消費支出は132,476円であることから、会社勤めであれば公的年金だけで生活費がまかなえる可能性があります。しかし個人事業主やフリーランスは国民年金しか受給できないことから、公的年金額が少なく、貯蓄を取り崩しながら生活していくことになる可能性が高いと言えるでしょう。

【高齢単身者が受給できる概算公的年金額】

受給額
会社勤め14万6,000円
個人事業主、フリーランス5万6,000円

・単身の個人事業主やフリーランスは十分な準備が必要

単身の個人事業主やフリーランスは月約7万6,000円が不足する計算です。男性の平均寿命で計算をすると、約1,502万円、女性の平均寿命で計算すると、約2,058万円を準備しておく必要がある計算です。

【単身の個人事業主やフリーランスだった方が老後に必要な金額】

男性の平均寿命をもとに計算女性の平均寿命をもとに計算
老後に必要な準備額約1,502万円約2,058万円

ゆとりある老後を送るためには?

生命保険文化センターの調査によると、ゆとりある老後生活を送る上で、必要と考える金額は約37.9万円。つまり65歳以上における高齢者の月平均消費支出(22万4,436円)の約1.7倍です。ゆとりある老後を送るための生活費を目標とする場合は、どの世帯であっても公的年金だけではまかなうことが難しいため、準備をする必要があります。

以下、各世帯でゆとりある老後を送るために準備しておくべき資金をまとめてみました。なお単身者のゆとりある老後資金については、65 歳以上の単身無職世帯の月平均消費支出は、単身無職世帯の月平均消費支出(132,476円)の1.7倍にあたる22.5万円で計算しています。

【ゆとりある老後を送るために必要な金額】
男性の平均寿命をもとに計算 女性の平均寿命をもとに計算

男性の平均寿命をもとに計算女性の平均寿命をもとに計算
夫婦2人とも会社勤め約1,719万円約2,356万円
夫婦一方が会社勤めで、もう一方が専業主婦(夫)約3,498万円約4,793万円
夫婦両方あるいは、夫婦のいずれかが個人事業主で、もう一方が専業主婦約5,276万円約7,231万円
会社勤め約1,561万円約2,139万円
個人事業主、フリーランス約3,340万円約4,577万円

【ゆとりある老後を送るための上乗せ額の用途】
ゆとりある老後を送るための費用に含まれるのは、以下のような費用です。
・旅行やレジャー
・日常生活の充実
・趣味や教養
・身内とのつきあい
・耐久消費財の買い替え
・子どもや孫への資金援助
・隣人や友人とのつきあい

高齢になると考慮しておきたい費用

ゆとりある老後を送るための生活費までは準備できなくても、月平均消費支出以外に介護費用、リフォーム費用は最低限用意しておきましょう。

生命保険文化センターの調査によると、介護に要した費用のうち一時的にかかった費用が平均74万円となっています。また介護にかかる月々の費用の平均が8.3万円、介護期間の平均が5年1ヶ月であることから約506万円が必要です。

【老後用意しておきたい介護費用】

一時金月々の費用(合算)合計
74万円約506万円約580万円

またリフォーム代も高齢になると検討しておきたい費用の1つです。同調査によると、給排水管を含む水回りや屋根、外壁など想定できる設備のリフォームを全て行ったと仮定した場合の費用の平均はマンションで329.7万円、戸建て住宅が349.7万円となっています。
老後が長期化しているため、この程度のリフォーム代が少なくとも1度は必要になると考えておくべきでしょう。

公的年金の不足を補う方法

老後にゆとりある生活費に近づけるために、公的年金の不足を補う方法を紹介します。ここで紹介する方法を複数組み合わせれば、さらに効率的に公的年金の不足を補うことができるでしょう。

家計の見直し

老後は公的年金だけでは平均的な生活ができないことを踏まえ、現役時代から家計の見直しをしておけば公的年金の不足を補う一助になるでしょう。

家計の見直しは、一度見直せば、見直し効果が継続する固定費の見直しが有効です。固定費の見直しとは、生命保険料やスマートフォン代金などの変動しない、あるいは、ほとんど変動しない支出である固定費を見直すことを指します。

定期購読や継続購入を意味するサブスクリプションも固定費に含まれます。

老後も働く

老後も引き続き働くことで、公的年金の上乗せ収入を作ることができます。安定して収入が得られる上、自身の労働時間や働く業種次第で大きく収入を増やせる可能性がありますが、一定年齢を過ぎると体力的に難しくなることも考えられます。

どのような業種で働くか、あるいは本人の体力、働く意欲などにもよりますが70歳以降も労働収入を確保するというライフプランは、現実的ではないかもしれません。

繰り下げ受給

公的年金は原則65歳から受給できますが、65歳よりも後に遅らせることで、1ヶ月あたり0.7%公的年金額を増額することが可能です。このように公的年金の受給時期を遅らせることを繰り下げ受給と言います。2022年4月より75歳まで受給年齢を遅らせることが可能で、75歳まで延長した場合、受給できる公的年金額が最大184%増額します。

仮に65歳時点で受給できる公的年金額が月額15万円の方が、75歳に繰り下げ受給した場合、受給できる年金額は27.6万円です。

ただし繰り下げ受給をしている間に万が一のことがあった場合、公的年金を全く受け取れずに一生を終えてしまう可能性があること、公的年金受給までの収入をどのように補うかを考慮しておく必要があります。

70歳まで繰り下げ受給をして公的年金額142%に増額し、それまでは労働収入で収入をつなぐなど、公的年金受給までのセカンドライフプランが今後は重要になってくるでしょう。

資産寿命を少しでも延ばす

手元資金の減少をなるべく抑えて、資産の寿命を延ばす方法も検討しておくとよいでしょう。資産寿命を少しでも延ばすもっともシンプルな方法は、定年退職後も運用を継続することです。
仮に手元に1,000万円の貯蓄があり、毎月10万円ずつ取り崩すと100ヶ月で貯蓄が底をつく計算になります。しかし仮に1,000万円を3%で運用しながら毎月10万円を取り崩した場合、手元の資金がなくなるまでの期間は理論上、約115ヶ月に延びます。

老後を迎える前になるべく早く備えよう

ゆとりのある老後を過ごすためには、数千万円単位の準備が必要なケースもあります。こうした大きな金額を1年や2年といった短い期間で準備をするのは難しいため、時間を味方に付けながら何らかの投資を活用していくことが必要になるでしょう。

老後が近くなって備えが少ないことに気付いても、できることは限られています。老後に向けた資産形成は、収入がある現役時代のうちになるべく早くスタートすることが大切です。老後に向けた資産形成をする上で、おすすめの方法を3つ紹介します。

iDeCoの活用

iDeCoとは個人型確定拠出年金の愛称です。iDeCoは自分で一定額を拠出し、そのお金であらかじめ用意されている商品の中からいくつかを選んで、老後の資産作りのために運用を行います。掛金は全額所得控除を受けられる、投資の運用益には税金がかからない、受取時にも税金の控除が受けられるなど、税制メリットが大きい制度です。

原則、掛金が60歳まで引き出せないというデメリットがありますが、老後の資産形成を重視したい方は活用したい制度です。

NISAの活用

NISAとは少額投資非課税制度を指します。NISA口座を作って運用した場合、一般NISAであれば年間投資元本120万円まで、つみたてNISAであれば年間投資元本40万円までは運用益に税金がかかりません。

iDeCoほどの税制優遇はありませんが、いつでも引き出しが可能です。

なお2024年からはこれまでの一般NISAとつみたてNISAが一本化され、併用可能になることが決まっています。

新NISAでは、これまで一般NISAにあたるものが「成長投資枠」、つみたてNISAにあたるものが「つみたて投資枠」に代わる予定です。現行NISAよりも、年間投資枠、非課税保有限度額が拡充し、非課税保有期間が無期限化される予定です。

不動産投資

不動産投資はアパートやマンションなどの不動産を購入して部屋を貸し出し、家賃収入を得る投資方法です。入居者がいる限り家賃収入が得られるため、老後も不動産を保有し続ければ、公的年金の上乗せ収入が作れます。
ただし多くの場合、不動産購入時に不動産投資ローンを利用します。不動産投資ローンを利用した場合は、老後の公的年金の上乗せ収入とするためには、ローンの返済を済ませることが必要です

まとめ

過去の勤務形態にもよりますが、多くの場合、公的年金だけでは老後、平均的な生活を送ることが難しい可能性があります。また、ゆとりある老後を送るためにはさらに多くの準備が必要です。大きなお金を短期間で準備することは難しいため、なるべく若いうちに老後に向けて投資や家計の見直し、不動産収入による副収入作りなどの対策を立てておきましょう。

元記事:老後の生活費の内訳は?一人暮らし、夫婦の事例をもとに解説

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部
この記事を書いた人

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部

LIFULL HOME'S 不動産投資は、不動産投資・収益物件の検索から不動産投資セミナーやイベント運営を実施。
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