【2022年東京23区基準地価】五輪選手村人気で中央区が住宅地の基準地価上昇率1位、次いで新宿、中野

本記事はLIFULL HOME’S 不動産投資からの寄稿記事です。
毎年7月1日時点での基準地価格を各都道府県が調査して公表する「基準地価」。東京都からは9月21日付けで、国土交通省からは9月22日付けで、その他各自治体からも続々と2022年度分最新の基準地価が公表されています。
その中でも今回は、東京23区の基準地価に注目してみたいと思います。今後東京23区内での不動産購入を検討している方はぜひチェックしてください。
全国的な基準地価、都市圏・地方圏など圏域ごとの変動については「【2022年基準地価】福岡県が2年連続地価上昇率全国一 住宅地は31年ぶりの上昇」に特筆すべきポイントがまとめられています。
ぜひ併せて読んでみてくださいね。
2022年 東京都全域での基準地価変動
まずは東京都全域での2022年基準地価がどのような結果だったのか、変動率を一覧にしてみましょう。
【東京都全域基準地価変動率】
住宅地 | 住宅地 | 商業地 | 商業地 |
---|---|---|---|
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 |
0.2 | 1.5 | -0.3 | 2.0 |
工業地 | 工業地 | 全用途 | 全用途 |
---|---|---|---|
2021年 | 2022年 | 2021年 | 2022年 |
1.9 | 3.2 | 0.1 | 1.7 |
それぞれの用途別に注目すべきポイントを見てみましょう。
全用途平均変動率は10年連続でプラスに
東京都全域での全用途平均は10年連続でプラスを維持、かつ0.1から1.7と上昇率も大きく拡大しました。
2021年の調査で基準地価が上昇した地点は433、一方2022年の調査では1,041地点で地価が上昇しています。反対に前年と比べて基準地価が下落した地点は2021年の365地点から、2022年は57地点と減少。
多くの地域で基準地価が下落から上昇へと転じていることが分かります。
住宅地・工業地は10年連続プラス
住宅地・工業地の平均変動率は10年連続プラスで、どちらも2021年から2022年にかけて上昇幅が拡大しました。
住宅地は765地点中628地点、工業地は全地点において変動率がプラスとなっています。
商業地は2年ぶりにプラスへ
2021年の調査で、9年ぶりにマイナスとなった東京都全域の商業地変動率。2022年の調査で、2021年の-0.3%から2.0%へと2年ぶりにプラスへ転じました。
商業地は468地点中397地点で地価が上昇。
引き続きマイナスとなっている地点でも下落幅の縮小が見られています。
2022年 東京23区の基準地価変動
次に東京23区に絞って基準地価の変動の様子をみてみましょう。
2022年度の調査では、東京23区は全区、全用途ですべて変動率がプラスとなっています。
では2022年基準地価調査における、東京23区の特徴的なポイントを解説していきましょう。
住宅地の基準地価 変動率トップは中央区
東京23区の住宅地において2021年に基準地価が上昇した地点は222、一方2022年の調査では348地点で地価が上昇しました。
区部全域では2021年調査の上昇率0.5%から2022年には2.2%と上昇幅が拡大しています。
【東京23区 住宅地の平均変動率ランキング】
1位……中央区4.0%(2021年1.1%)
2位……新宿区3.7%(2021年1.0%)
3位……中野区・豊島区3.3%(2021年中野区0.8%・豊島区1.2%)
(参考:東京都財務局「令和4年東京都基準地価格の概要」(2022年9月))
【東京23区 住宅地の基準地別 上昇率ランキング】
1位……中野区新井二丁目 5.6%
2位……中央区晴海五丁目 4.7%
3位……新宿区戸山一丁目 4.5%
(参考:東京都財務局「令和4年地価調査 基準地上昇率順位一覧表(住宅地)」)
こうした変動率順位になっている要因については後ほど解説します。
商業地の基準地価 変動率トップは杉並区
2021年には東京23区中9区でマイナスとなった商業地の基準地価。都心5区といわれる千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区すべてでマイナスとなりました。
そこから一転、2022年の調査では中央区の0.0%を除く22区の商業地がプラスに。区部全域では2021年調査の変動率-0.3%から2022年には2.2%と上昇に転じています。
【東京23区 商業地の平均変動率ランキング】
1位……杉並区3.8%(2021年0.6%)
2位……北区3.7%(2021年0.4%)
3位……中野区・荒川区3.5%(2021年中野区0.6%・荒川区0.4%)
(参考:東京都財務局「令和4年東京都基準地価格の概要」(2022年9月))
【東京23区 商業地の基準地別 上昇率ランキング】
1位……足立区千住三丁目 6.2%
2位……足立区千住旭町 6.0%
3位……中野区中野五丁目 5.9%
(参考:東京都財務局「令和4年地価調査 基準地上昇率順位一覧表(商業地)」)
こうした変動率順位になった影響や要因については後ほど解説します。
工業地の基準地価 全地点でプラスに
東京23区の工業地は基準地全9地点で変動率がプラスとなりました。
区内全域の変動率は2021年の1.7%から2022年の3.3%へと上昇幅が拡大。上昇率最大は大田区の4.3%です。
東京都の基準地価格1位の銀座地区 下落幅縮小
東京都の商業地で基準地価格が最も高い中央区銀座二丁目の明治屋銀座ビル。令和4年の基準地価格は3,930万円/m2でした。
2022年変動率は-0.5%で、2021年の変動率-3.7%と比較して下落幅が縮小しています。
実は銀座地区では新型コロナの影響で地価の下落が続いています。
商業地において下落のあった基準地9地点中7地点を中央区が占めているのが現状。東京都の商業地における基準地価下落率のトップは中央区銀座七丁目のビルで-2.3%です。
ただし2021年調査の変動率-9.0%と比較して下落幅が大きく縮小しています。
東京都の基準地価変動の要因を探ろう
ここまで、住宅地・商業地それぞれの地価変動の実情を見てきました。
さまざまな変動には、どのような要因があり、どのような影響があるのでしょうか?
コロナ禍での経済状況・個人消費の持ち直し
いまだ長引くコロナ禍にあっても、2021年から2022年にかけて徐々に経済活動が戻りつつあることから、店舗需要にも回復傾向が見られています。
内閣府「月例経済報告(令和4年8月)」においても「景気は緩やかに持ち直している」と示されています。
先述した銀座地区の下落幅縮小もその1つの傾向といえるでしょう。
新宿区歌舞伎町でも2021年の基準地価変動率-10.1%から2022年には0.0%に持ち直しました。
個人消費が持ち直してきていることで、旅行・観光など人の動きも回復傾向にあり、繁華街を中心に基準地価の上昇、下落率の縮小が見られていることが分かります。
再開発地域での顕著な地価上昇
大規模な再開発が進む地域では、将来的な発展性を期待して住宅地・商業地ともに地価が上昇する傾向が強く現れます。
東京23区の住宅地で最も高い基準地上昇率5.6%を示した中野区新井二丁目、商業地3位の基準地上昇率5.9%を示した中野区中野五丁目はどちらも中野駅周辺。中野サンプラザ跡地に予定されているシンボルタワーを含め「100年に1度の再開発」といわれるほどの大規模再開発が進み、街が大きく変わろうとしています。
また東京23区商業地の基準値上昇率トップ5中3つに入っているのが足立区千住地区。いずれも北千住駅周辺です。北千住駅の利便性に加え、駅前再開発による地域活性化への期待から地価が上昇しています。
五輪選手村マンションの人気上昇
東京23区住宅地の基準地別上昇率ランキング2位の中央区晴海五丁目。このエリアは現在、五輪選手村として使われていた大型マンションがリフォームされ、分譲販売されています。
商業施設を含めた24棟の施設で構成され、分譲住宅4,145戸、賃貸住宅1,487戸、合計5,632戸という大規模マンション。2023年秋の竣工、2024年3月下旬からの入居開始を予定しています。
販売戸数に対する申し込み倍率は平均13.9倍。五輪終了後には最高倍率111倍となった部屋もあったそうです。
こうした人気の高さもあり、2021年107万円/m2だった基準地価格は2022年には112万円/m2に上昇しました。
五輪選手村マンションに限らず、勝どき・月島エリアには強い住宅需要があり、中央区の住宅地基準地価の上昇をけん引しているのではと考えられます。
高い住宅需要の継続
続く低金利と住宅ローン減税によって、住宅需要の高さは継続しています。新型コロナの影響で在宅勤務する人が増え、自宅に快適性を求めた結果、持ち家志向が高まっていることも要因の1つでしょう。
さらに東京圏では「パワーカップル」と呼ばれる共働き夫婦世帯が増え、タワーマンションなど高価格帯の分譲マンションへのニーズが高く、マンション価格が高騰しています。
こうした住宅需要の高さも、地価上昇に影響を与えている要因の1つと考えられます。
東京都内のマンション価格高騰については、以下の記事をぜひ参考にしてください。
物件数が減少……東京23区新築マンションは平均価格8,455万円に高騰! マンション投資するなら「今」のワケ【前半】
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物件購入・売却には地価変動・金利など複合的な判断を
長引くコロナ禍にあっても、徐々に経済状況の回復が見られ、地価上昇や下落幅の縮小が各地で見られた2022年の基準地価。
住宅地の全国平均基準地価はバブル期以来31年ぶりに上昇するなど、東京23区に限らず全国的に地価の上昇が見られています。
不動産購入を検討している場合、今後も上昇傾向が続くのであれば、早めの購入が有利かもしれません。
さらに注意したいのが、2022年に入り金利の上昇が見られていることです。
住宅金融支援機構「【フラット35】借入金利の推移」(2022年10月3日現在)によると、2022年1月から金利が上昇傾向にあることが分かります。
2022年1月に1.300%だった最低金利は、2022年8月には1.530%へと上昇しているのです。(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下、新機構団信付きの場合)
今後の不動産購入や売却のタイミングを計るには、地価変動・金利・ターゲットエリアの今後の状況などを複合的に判断するのがよいでしょう。
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