年金納付は45年に、iDeCoも69歳までと相次ぐ延長⁈「日本の老後」はどう変わるのか

本記事はLIFULL HOME’S 不動産投資からの寄稿記事です。
「年金」と聞くと、まず国民年金や厚生年金といった公的年金を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「いくら年金がもらえるのか」「年金以外にいくら必要なのか」といった話題を耳にする機会は少なくありませんが、老後の生活を支える資産形成の手段としては、自分で用意する私的年金の一種であるiDeCoが挙げられます。iDeCoはまだできて日が浅い制度ですので、よく知らないという人はまだまだ多いかもしれません。そこで今回はiDeCoについて、年金の基礎から制度改正の流れまでわかりやすく解説します。
そもそもiDeCoって何?
iDeCoとは確定拠出型年金の一種
iDeCo(イデコ)とは、厚生労働省のホームページによれば「自分で決めた額(掛け金)を積み立てて運用し、60歳以降に受け取る年金」とのこと。つまり、iDeCoとは自分で積み立てるタイプの年金の一種なのです。こうした決まった金額を積み立てる、つまり拠出していく方式を確定拠出型年金といいます。
69歳まで加入可能に引き上げ?
iDeCoの公式サイトによると、iDeCoの加入年齢は2022年5月から65歳まで引き上げられました。さらに、国は加入年齢を将来的には70歳未満、つまり69歳まで引き上げる方針を打ち出しています。予定どおりに加入年齢の引き上げが実現すれば、より多くの人に利用される制度になることでしょう。
国民年金の年金納付期間は40年から45年に?
また、政府はすでに国民年金の年金納付期間をこれまでの40年から45年に延長するよう検討を始めています。もしこのまま延長されると約100万円、負担額が増加します。
年金の問題は政府も本腰を入れて改革をしようとしており、iDeCoの導入や改革もこの年金制度の整備の一環といえます。次に、iDeCoの特徴を押さえておきましょう。
iDeCoの特徴6点
iDeCoは年金の一種であり、政府も制度を改良して時代の要請に応えようとしています。ではそのiDeCoにはどんな特徴があるのでしょうか。今回はiDeCoの特徴を6点挙げてみました。既存の公的年金制度とは異なる部分もありますので、さっそく見ていきましょう。
iDeCoは個人で掛け金を決める年金
国民年金や厚生年金は1月当たりの掛け金が決められています。例えば国民年金であれば1万6,590円といった具合です。これに対してiDeCoは掛け金、つまり拠出額を自分で決定することができます。拠出額に限度はありますが、自分の収入や必要とする年金の額に応じで調整できるのです。
【拠出限度額】
1.国民年金第1号被保険者(自営業者等):6万8,000円/月
※国民年金基金の掛け金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額
2.国民年金第2号被保険者(厚生年金保険の被保険者)
■確定給付型の年金および企業型DCに加入していない場合(公務員を除く):2万3,000円/月
■企業型DCのみに加入している場合:2万円/月
※企業型DCの事業主掛け金額との合計額が5万5,000円の範囲内
■確定給付型の年金のみ、または確定給付型と企業型DCの両方に加入している場合:1万2,000円/月
※企業型DCの事業主掛け金額との合計額が2万7,500円の範囲内
■公務員:1万2,000円/月
3.国民年金第3号被保険者(専業主婦(夫)等):2万3,000円/月
4.国民年金任意加入被保険者:6万8,000円/月
※国民年金基金の掛け金、または国民年金の付加保険料を納付している場合は、それらの額を控除した額
iDeCoは投資信託などで運用する年金
iDeCoの運用は主に投資信託に投資することによって行います。このあたりは年金制度を利用しない通常の投資と同様です。ただし、投資先はローリスクと見なされる指定された運用商品のみに限られています。
iDeCoは年金として老後に受け取る
iDeCoはリタイア後に備える年金であるため、儲かったからといってすぐに解約ができるわけではありません。原則として受け取りは60歳からとなっています。iDeCoではない一般的な投資信託の取引(NISA制度を活用した場合を含む)であれば、自分の思ったタイミングで売買することができますが、iDeCoにはこうした制約があるのです。
老齢給付金 | 障害給付金 | 死亡一時金 | 脱退一時金 |
---|---|---|---|
5年以上20年以下の有期、または終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) | 5年以上20年以下の有期、または終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) | 一時金 | 一時金 |
原則60歳に到達した場合に受給できる (60歳時点で確定拠出年金の通算加入者等期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢が段階的に引き延ばしになる) | 75歳到達前に傷病で一定以上の障害状態になった加入者等が、傷病状態で一定期間(1年6ヶ月)経過した場合に受給できる | 加入者等が死亡した場合に、その遺族が資産残高を受給できる | 一定の要件を満たした場合に受給できる |
拠出時や運用益は非課税
iDeCoでは基本的に60歳まで年金を受け取ることができない代わり、拠出時や運用益に税金はかかりません。一般的な投資信託の取引の場合は運用益、配当金などには一定の税金がかかります。非課税である分、ローリターンであっても収入を確保しやすいところがiDeCoの強みといえるでしょう。
拠出時 | 非課税 ■加入者が拠出した掛け金:全額所得控除(小規模企業共済等掛け金控除) ■iDeCo+を利用し事業主が拠出した掛け金:全額損金算入 |
運用時 | ■運用益:運用中は非課税 ■積立金:特別法人税課税(現在、課税は停止されています) |
給付時 | ■年金として受給:公的年金等控除 ■一時金として受給:退職所得控除 |
投資でもあるため元本は保証されない
iDeCoは年金ではあるものの、投資の側面もあります。投資は儲けが出ることもあれば損失を被ることもあります。元本は保証されていないため、相場次第、運用の状況次第では投資した元本を回収できないこともあります。この点が、一般的な国民年金などとは異なる点でしょう。
変わりゆく年金とiDeCo
国民年金の制度が運用され始めたのは1961年のこと。それから60年以上たっています。その頃に生まれた人がそろそろ年金を受け取る世代になりました。働く高齢者も増え、社会の状況はかつてとは異なっています。
年金制度も時代に連れて変わっていかなくてはいけないでしょう。ここでは、年金制度やiDeCoの改正について見ていきます。
45年間年金納付の対象者は?
仮に国民年金の年金納付期間が40年から45年になったとしても、すべての人の負担が増えるとはいえません。個人事業主などの国民年金の第1号被保険者、60歳以前に退職して厚生年金から国民年金に切り替えた人は、負担増となります。一方で、厚生年金に加入しているサラリーマンなどにとっては、影響は大きいといえないでしょう。
働く高齢者に対応
高齢化社会に突入し高齢者が増え、70歳以上でも働き続けることが珍しくない時代となりました。年金制度としても、かつてのようにすべての人に60歳から給付するという必要性は薄まっているといえます。iDeCoについて69歳までの加入可能年齢引き上げが検討されていることも、働く高齢者の増加という社会変化に対応しているのです。
年金は自分でも用意する時代へ
年金以外に2,000万円が必要になるという趣旨の報告書を金融庁設置の審議会が公表して話題になった「2,000万円問題」も記憶に新しいところです。2,000万円が必要かどうかはともかく、豊かな老後を過ごすには公的な年金以外にも自分で資金を用意しておくべきであることは間違いないでしょう。行政は、老後資金のすべてを工面してくれるわけではありません。
公的年金とiDeCoを並行して考えよう
ニュースなどで「豊かな老後には〇〇万円が必要」と不安をあおるような記事を目にすることもあります。もちろん、老後資金はあるに越したことはないでしょうが、今の生活資金をやみくもに削って老後資金に回すのも考えものです。
iDeCoは年金の一種で、国民年金などの公的年金とiDeCoを並行して検討してみることも有効です。そして無理のない範囲でiDeCoを活用すれば、現在の生活も将来の生活にも、きっとプラスになるでしょう。
まとめ
年金制度ができて60年以上。働く高齢者も多くなり、年金を取り巻く環境も年金制度自体もずいぶんと変わりました。多くのものが変わったとしても、老後の生活に年金が重要な役割を果たすことには変わりありません。年金の一種であるiDeCoなどを上手に活用し、豊かな老後を目指しましょう。

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部
LIFULL HOME'S 不動産投資は、不動産投資・収益物件の検索から不動産投資セミナーやイベント運営を実施。
不動産投資にまつわる新鮮な情報、トレンドを発信。
LIFULL HOME'S 不動産投資には不動産投資の知識・アイディア・ヒントが盛りだくさん。