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おすすめコラム 2023.01.26

女性の労働力率がすべての年齢階級で上昇。日本の「働く」を統計から考えてみよう

本記事はLIFULL HOME’S 不動産投資からの寄稿記事です。

2022年5月に公表された総務省統計局「令和2年国勢調査 調査の結果(就業状態等基本集計)」によると、2015年と比較して女性の労働力率がすべての年齢階級で上昇しました。少子高齢化により人口減少の時代を迎え、労働力不足が予測される日本。今後も日本の労働市場は変化していくでしょう。

そこで今回は、日本の「働く」現状について様々な統計から読み取ります。現状を踏まえた上で、日本の「働く」に関する課題について考えていきましょう。

統計から見る女性と高齢者の就業状況

まずは、冒頭で紹介した総務省統計局「令和2年国勢調査 調査の結果(就業状態等基本集計)」から女性の就業状況を読み取ってみましょう。

男女別の労働力率を見てみると、女性はすべての年齢階級において2015年よりも2020年は労働力率が上昇していることが読み取れます。また、上図Ⅰ-1を見ると、男性の労働力率は25~59歳まで90%を超えてほとんど形の変わらないグラフとなっていますが、女性はある年齢階級で労働力率が減少するM字カーブの形となっています。この背景には、女性は結婚や出産、育児といったライフステージの変化による影響が考えられるでしょう。とはいえ、男女雇用機会均等法が施行される前の1985年と2015年・2020年を比較するとM字カーブの底は上昇しています。女性が働きやすい環境で活躍できるよう国が推進していることもあり、女性全体のM字カーブ解消に向けて変化しているといえるでしょう。

続いて、総務省統計局「労働力調査(基本集計)」から、高齢者の就業状況について見ていきます。65歳以上の就業者数は2004年以降18年連続で増加、2021年は912万人と過去最多になりました。

【就業者数(万人)】

2015201620172018201920202021
65~69歳399435444441428413399
70歳以上330332363421464492513
合計730767807862892906912
出典:総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ(年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率)」※2020年国勢調査基準切り替え以前の既公表値

65歳以上の就業者数の内訳を見てみると、2017年までは65~69歳、2017年以降は主に70歳以上の就労者数が増加していることが読み取れます。2017年以降に団塊の世代が70歳を迎えたことなどの影響から、内訳に変化があったと考えられるでしょう。

【就業率(%)】

2015201620172018201920202021
65~69歳41.542.844.346.648.449.650.3
70歳以上13.713.714.516.217.217.718.1
65歳以上21.722.323.024.324.925.125.1
出典:総務省統計局「労働力調査 長期時系列データ(年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率) 」 

2021年は65~69歳の就業率が50%を超えました。年齢が高くなるにつれて就業率は低くなる傾向にあるとはいえ、70歳以上の就業率も年々上昇を続けています。このことから、就業意欲が高い高齢者と高齢者を雇用する企業が増えていることが窺えるでしょう。少子高齢化により人口が減少し始めている日本では、労働力不足の課題もあります。政府が多様な働き手の参画を求めていることなどから、今後も女性や高齢者の労働参加拡大が見込まれるでしょう。

統計から見る就業者の産業・職業

先ほども紹介した「令和2年国勢調査 調査の結果(就業状態等基本集計)」では、15歳以上の就業者の産業別割合も公表されています。

15歳以上就業者の産業(大分類)を見ると、「製造業」が最も多く、「卸売業,小売業」、「医療,福祉」が続いています。産業(大分類)の中でも「医療,福祉」は2015年と比較すると割合が最も拡大しています。新型コロナウイルス感染症拡大の局面では、医療現場の人材不足が度々話題に挙げられました。少子高齢化の進行による介護需要の高まりも、「医療,福祉」の割合拡大の背景にあることが考えられるでしょう。

続いて、15歳以上就業者の職業(大分類)を見てみましょう。2015年と比較して最も割合が拡大しているのが「専門的・技術的職業従事者」です。専門的・技術的職業従事者とは、専門性の高い仕事に従事している人などをいいます。たとえば研究者・医師・看護師・保健師・教員・芸術家など。抽出詳細集計がまだ公表されていないので詳しい内訳はわかりませんが、産業(大分類)では「医療,福祉」が最も割合が拡大していることを踏まえると、感染症拡大による医師・看護師・保健師など医療従事者の需要の高まりが影響を与えているのかもしれません。

就業者の産業・職業小分類別構成等に関する詳細な結果については2022年12月に公表予定となっています。最新の情報は、総務省統計局のWebサイトをご確認ください。

2030年に644万人の人手不足が推計される

パーソル総合研究所と中央大学が発表した「労働市場の未来推計 2030 」では、労働供給から労働需要を差し引いた人手不足数が2030年には644万人になると推計しています。人手不足数を産業別に見ると、最も人手不足が予測されるのが「サービス業」で400万人の不足、次いで「医療・福祉」で187万人の不足となっています。いずれも既に人手不足といわれている業種ですが、少子高齢化の進行などによるさらなる労働需要の高まりに対して労働供給が追いつかないと考えられているのです。

また、「労働市場の未来推計2030」では、644万人の人手不足を踏まえて「働く女性を増やす」「働くシニアを増やす」「働く外国人を増やす」「生産性を上げる」といった4つの対策を提言しています。つまり、女性や高齢者の労働参加率を上げたり、外国人労働者を増やしたりして労働供給を確保し、AIなどの自動化を活用して生産性を上げて労働需要を削減するという対策です。この対策の実現には、待機児童や介護問題などの対策も考えていかなければならないでしょう。そのため、労働力不足を解消していくためには、ライフイベントに応じた柔軟な働き方ができる労働環境を整える仕組み作りなども大切だといえます。

なお、「労働市場の未来推計2030」が提言している644万人という人手不足数は、実質賃金が時給換算で今よりも240円上がっている状態であることが前提での推計です。そのため、賃金がこの水準まで上昇しなければ人手不足がさらに増大するといえます。労働力不足の課題をクリアするためには、賃金の引き上げも重要なポイントとなるでしょう。

今後も統計などをチェックして日本の「働く」を考えてみよう

今回は、総務省統計局が公表する統計調査の結果を中心に、日本における「働く」現状を紹介しました。令和2年国勢調査の結果では前回の調査結果よりも女性の労働力率がすべての年齢階級で上昇、2021年の労働力調査の結果では高齢者の就業者数・就業率が上昇していることから、働く女性や高齢者の割合が増えていることが読み取れるでしょう。

少子高齢化の進行により、日本は人口減少の時代に突入しています。年々出生数が減少していることから、今後も働き手の中心となる生産年齢人口は減少していくでしょう。労働力不足の問題は長時間労働や待機児童、介護問題など、日本における様々な社会問題とも複雑に絡み合っています。労働力不足をどのように解消していくのか、国の政策と方向性を今後も確認していきましょう。

元記事:女性の労働力率がすべての年齢階級で上昇。日本の「働く」を統計から考えてみよう

LIFULL HOME'S 不動産投資編集部
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