不動産クラウドファンディングとは?仕組みやメリット・他の不動産投資との違いを解説

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部です。
不動産クラウドファンディングは今注目されている新しい不動産投資の手法です。実際に不動産を購入しなくても家賃収入や売買益などの利益を受け取れること、1万円から気軽に投資できることなどから、「比較的高い利回りの商品で運用したい」「少額からの不動産投資にチャレンジしたい」という人に注目されています。
高額な不動産を小口化して投資資金を募り、収益を分配するような事業は以前からありましたが、2017年の不動産特定共同事業法(不特法)の改正により、個人投資家がインターネットを通じてより簡単に、不動産に投資できるようになりました。
この記事では、2017年の改定不動産特定共同事業法に基づくファンドに投資をおこなう「不動産クラウドファンディング」について、仕組みや他の不動産投資との違い、メリットや注意点についてくわしく解説します。
- 不動産クラウドファンディングとは?
- 不動産クラウドファンディングの仕組み
- 不動産クラウドファンディングと他の不動産投資との違い
– 現物不動産投資との違い
– J-REITとの違い - 不動産クラウドファンディングのメリット|初心者が投資を始めやすい4つの理由
– 少額の1万円から投資可能
– 投資期間を自由に選べる
– 不動産管理の手間がかからない
– 事業者によるリスク軽減の仕組みがある - 不動産クラウドファンディングのリスクや注意点|初心者が覚えておきたい3つのポイント
– 元本割れリスクがある
– 事業者の倒産リスクがある
– 現物投資に比べてレバレッジ効果が薄い - 不動産クラウドファンディングの始め方
- まとめ
不動産クラウドファンディングとは?
不動産クラウドファンディングとは、投資家から資金を集めて不動産を賃貸、あるいは取得し、賃貸料や不動産売買益を「分配金」として投資家に還元するという投資手法です。平均的な利回りは2%~8%となっています。分配金を受け取る頻度は「毎月」「半年ごと」「1年ごと」「償還時のみ」など、ファンドによって異なるため、申し込み時に確認しておくことが大切です。受け取った分配金を再投資すれば、複利運用と同じような効果も期待することができます。
今までは不動産投資というと、直接不動産を所有する「直接投資」と、一種の投資信託であるJ-REITなどを購入する「間接投資」の2通りしかありませんでした。しかし、2017年に法律が改正され、インターネットを通じた不動産投資ができるようになりました。不動産クラウドファンディングは、現物投資・間接投資に並んで、3つめの不動案投資の手法ということができます。
不動産クラウドファンディングの仕組み
不動産クラウドファンディングは、案件の申し込みから分配金の受け取りまですべてインターネット上で行うことができます。
不動産クラウドファンディングではまず一般投資家から資金を募り、集まった資金を使って不動産物件を賃貸あるいは取得し、改修及び運営を行います。そして、そこで得られた利益は、出資比率に応じて投資家に分配されるという仕組みです。
「物件の修繕」や「入居者を管理」というような重要な運用管理業務もすべて事業者が行ってくれるため、手間や費用はかかりません。不動産クラウドファンディングでは、投資したい案件を選んで申し込みと入金を行うだけで、定期的に分配金を受け取ることができます。
不動産クラウドファンディングの投資対象
不動産クラウドファンディングは、案件によってさまざまな不動産に投資しています。不動産の種類によって収益性がかわってくるため、案件を選ぶときには「どのような不動産に、どのようなスキームで投資しているのか」をしっかりと確認することが大切です。
たとえば、マンションやアパート、中古住宅などの居住用不動産は、高い利回りは期待できないものの、比較的投資リスクは低いという特徴があります。逆に、ホテルや民泊の宿泊施設は、景気によって稼働率が大きく変動します。景気が良いときには需要が高まって高い利回りが期待できますが、逆に不景気になって観光客などが減れば、需要が一気に低下するなど、投資リスクが高いため、予想配当利回りは比較的高く設定されています。
不動産クラウドファンディングを選ぶときには「安定性」と「収益性」のどちらを重視するのかをまず考え、自分の考えに合わせた投資先を選ぶことが大切です。
不動産クラウドファンディングと他の不動産投資との違い
現物不動産投資との違い
不動産クラウドファンディング | 現物不動産投資 | |
---|---|---|
最低投資金額 | 1万円から | 多い |
レバレッジ効果 | 中 | 高い |
不動産管理コスト | 不要 | 必要 |
流動性 | 中 | 低い |
所得の種類 | 雑所得 | 不動産所得 |
現物不動産投資と不動産クラウドファンディングとの一番の大きな違いは「少額の1万円から投資できるため、まとまった資金を用意しなくてもよい」という点です。
現物の不動産投資では、まず収益物件を取得するために数百万円から数千万円、大きな物件では数億円の元手が必要です。
資金がない場合は銀行からの融資を受けることになりますが、融資の審査を受けるために事業計画書などを作成・提出しなければならず、時間や手間がかかります。また、融資を受けられた場合は、毎月の返済義務が生じることになります。不動産を購入するため、所有権を得ることができるものの、登記費用や不動産取得税などの費用も必要です。
その代わりに小額の元手からの多額の投資によるレバレッジ効果が期待できることが現物不動産投資の魅力となります。
また、不動産投資では部屋の修繕やリフォームなどの不動産管理コストが生じますが、これは不動産現物投資、不動産クラウドファンディングのどちらの場合もかかります。ただし、不動産クラウドファンディングでは、ファンドの運営事業者がすべての管理業務をおこなうため、手間は一切かかりません。
不動産現物投資の場合は、投資家自らが管理業務を行わなければならないため、多くの時間や手間がかかります。管理会社に任せる場合でも、管理会社の選定や委託といった作業が必要となります。
J-REITとの違い
不動産クラウドファンディング | J-REIT | |
---|---|---|
最低投資金額 | 1万円から | 数万円から |
リスク分散 | 低い | 中 |
流動性 | 低い | 高い |
ボラティリティ (価格変動性) | 低い (安定している) | 高い (変動しやすい) |
所得の種類 | 雑所得 | 譲渡所得・配当所得 |
J-REITとは、投資家から資金を集めてマンションやオフィスビル、商業施設などの不動産を購入し、賃貸収入や売買益を投資家に分配する不動産投資信託のことをいいます。
少額から投資できるという点は不動産クラウドファンディングと似ていますが、J-REITは法律上、上場投資信託として扱われます。そのため、証券市場で毎日値がつけられており、証券市場が開いている時間であれば、いつでも好きなときに売買することが可能です。このように、流動性が高いことがJ-REITの大きな特徴となっています。
逆に不動産クラウドファンディングでは、運用期間中に持分を自由に譲渡し、現金化することが難しくなっています。
ただし、J-REITは株式と同様に流動性が高いため、リーマンショックのような突発的な事態が起こったときは、株と同じように売り込まれてしまうことがあります。J-REITは流動性が高いがゆえに、実際の不動産よりも価格が変動しやすいということを覚えておきましょう。
また、不動産クラウドファンディングは一般的にひとつの物件に投資しますが、J-REITは複数の物件に投資しています。ひとつの物件で利益率が悪くても、他の物件で補うことができるため、J-REITの方がリスク分散に優れています。
ただし、J-REITでは、投資する不動産を自分で選ぶことができません。どのような不動産に投資をしているかということは公開されているものの、投資物件選びから運用まで、すべてJ-REIT側に任せることとなります。
不動産クラウドファンディングのメリット|初心者が投資を始めやすい4つの理由
不動産クラウドファンディングには多くのメリットがあり、初心者が安心して投資を始められるような仕組みになっています。それではくわしくみていきましょう。
1. 少額の1万円から投資可能
不動産クラウドファンディングは、1万円という少額から始めることができます。現物の不動産投資とは違い、お小遣い程度の金額から気軽に投資できることが魅力です。
投資資金がたくさんある場合でも、まずは試しに1万円から始めてみるのがおすすめです。実際に分配金を受け取って運用の流れを確認してから、まとまった金額を投資する人も多くなっています。
2. 投資期間を自由に選べる
不動産クラウドファンディングでは「25カ月」「31カ月」「60ヵ月」というように、案件ごとに投資期間が決められており、自分の希望に合った案件を選ぶことが可能です。
また、外観や築年数、管理状況など、投資物件についての情報もきちんと公開されているため、さまざまな情報を自分で見ながら投資物件を選ぶことができます。
3. 不動産管理の手間がかからない
現物の不動産投資では、収益物件の修繕や管理が不可欠です。入居者が退去した後には設備の修理や専用部分の修繕、ハウスクリーニングなどが必要で、一戸につき約10~20万円ほどかかります。新たな入居者を募集するためには必要なことではありますが、投資する側からみると、金銭的な負担が大きくなります。
不動産クラウドファンディングでもこのようなコストがかかりますが、ファンドの事業者がすべておこなってくれるため、業者の手配等の手間がかかりません。
少額から始めることができ、運用の手間もかからないことが不動産クラウドファンディングの大きなメリットとなっています。
4. 事業者によるリスク軽減の仕組みがある
一般的な不動産投資では「取得物件が値下がりするリスク」と「入居率が下がり収益が減るリスク」がありますが、不動産クラウドファンディングではこれらのリスクから投資家を守る、ふたつの仕組みがあります。
ひとつ目は、「優先劣後出資」です。優先劣後スキームでは、投資物件に出資するときに投資家だけでなく、事業者側も一定の出資金を出します。そして、損失が出た場合は、まずは事業者の出資金から優先して損失に充てられる仕組みです。
例えば、10億円の投資物件で、投資家からの出資が9億、事業者の出資が1億の場合を考えてみましょう。このファンドでもしも損失が出た場合は、損失額が1億円までであれば事業者の出資金からまかなうため、投資家が損をすることはありません。
優先劣後スキームでは、事業者の出資割合が高ければ高いほど、投資家のリスクが少なくなります。劣後出資割合は案件によって違うため、最初にしっかりと確認するようにしましょう。
ふたつ目は、マスターリース契約です。この契約では入室状況にかかわらず、固定の金額が払われるのが特徴です。マスターリース契約をしている案件では、たとえ空室が多くても事業者側が投資家に対して一定の金額を支払うため、投資家は安定した分配金を受け取ることができます。
ちなみに、マスターリース契約はファンド事業者(貸主)と不動産会社(借主)の間で結ばれる契約を指し、不動産会社が第三者に転貸することをサブリース契約といいます。これらをまとめてサブリースと呼ばれる場合もあります。
この二つの仕組みはファンドによっては設定されていないこともあるので、要確認です。また、ファンドの事業者やマスターリースを引き受ける会社そのものが破綻するというリスクはあります。優先劣後やマスターリースの仕組みがあっても、投資家のリスクはゼロではないということを覚えておきましょう。
不動産クラウドファンディングのリスクや注意点|初心者が覚えておきたい3つのポイント
不動産クラウドファンディングにはリスクや注意すべき点もあるため、それらをしっかりと理解しておくことが大切です。
1. 元本割れリスクがある
不動産クラウドファンディングでは、優先劣後出資があるファンドであっても元本割れリスクはゼロではありません。
例えば、何らかの理由で不動産価格が暴落し、事業者の出資分より大きな損失が出た場合は、投資家のお金が減って損失が出ることがあります。
それでは、どれくらいの劣後出資割合であれば安心できるのでしょうか。例として、不動産価格が大きく暴落したとされる、2008年9月のリーマンショック時の不動産価格指数(国土交通省公表)の推移をみてみましょう。
東京を含む南関東圏において、店舗やオフィス、マンション・アパートなどを含む「商業用不動産総合指数」の2008年から2009年の推移は以下となっています。
期間 | 不動産価格指数(商業用不動産) |
---|---|
2008年Q2 | 127.9 |
2008年Q3 | 114.9 |
2008年Q4 | 106.7 |
2009年Q1 | 94.0 |
2009年Q2 | 105.6 |
2009年Q3 | 100.8 |
2009年Q4 | 96.6 |
リーマンショック後に一番指数が低下したのは2009年Q4となっており、2008年Q2から約25%の低下となっています。
これらのデータをもとに考えると、リーマンショックと同規模の不動産の暴落があった場合、劣後出資割合が10%のファンドでは損失が出る可能性が高いものの、30%のファンドであれば損失が出る可能性が比較的低いと予想することができます。
ただ、投資している不動産はファンドによって違うため、場合によっては不動産指数以上の下落幅になる場合もあります。
このように、不動産価格が大きく変動した場合でも、事業者の劣後出資割合が高ければ高いほど、投資家の損失が発生する可能性は低くなります。投資案件を選ぶときには、「事業者の劣後出資割合」も必ず確認するようにしましょう。
2. 事業者の倒産リスクがある
不動産クラウドファンディングのもうひとつのリスクとして、ファンドの事業者の倒産リスクがあげられます。
現物不動産投資の場合は、投資家が実際に登記をして、不動産の所有権を手に入れることができます。しかし、不動産クラウドファンディングでは、投資家が実際に不動産の所有権や貸借権を得ることなく、事業者に対する持ち分の権利を得られるということが大きな特徴であり、所有権や貸借権は事業者が保有します。
そのため、もしも事業者が倒産して債務不履行を起こした場合、元本が割れたり、出資金が戻らなかったりする可能性があります。
事業者の倒産リスクをできるだけ低くするためにも、資本金や事業規模などを確認し、信頼性が高い不動産クラウドファンディング業者を選ぶことが大切です。
3. 現物投資に比べてレバレッジ効果が薄い
不動産クラウドファンディングは、現物不動産投資のようなレバレッジ効果を期待することはできません。レバレッジ効果とは、銀行から融資を受けて自己資金以上の大きな物件を購入することで、「自己資金のみの投資」の場合よりも、高い収益を目指すことができる手法です。
不動産クラウドファンディングは大きな利益を狙うのではなく、リスクを抑えつつ安定的な分配金を得る投資法ということができます。
不動産クラウドファンディングの始め方
不動産クラウドファンディングは、口座開設から案件の申し込みまで、すべてインターネット上で完結させることができます。
いろいろな不動産クラウドファンディング事業者がありますが、どの事業者も基本的な申し込み方法は同じです。
会員登録から実際に運用を始めるまでの流れは、以下のようになっています。
- 不動産クラウドファンディング事業者を選ぶ
- インターネット上で会員登録を行う
- 自宅にハガキが届くので受け取る
- 投資する案件を選び、申し込みをする
- 専用口座に入金する
- 審査が完了すると、運用が開始される
不動産クラウドファンディング事業者によって、扱っている案件が違います。「多くの物件の中から、一番条件がよいものを選びたい」という場合は、複数の事業者に登録するとよいでしょう。
まとめ
不動産クラウドファンディングは、1万円から投資でき投資期間や物件を選べること、優先劣後方式やマスターリース契約などで収益性確保の仕組みがあること、不動産管理が不要なことなどから、「手軽に始められる不動産投資」として注目を集めています。
会員登録から実際に運用を始めるまで、すべてインターネット上で完結できるため、だれでも簡単に始められることも魅力です。平均的な利回りは2%~8%ほどで、銀行預金より高い利回りが期待できます。
LIFULL 不動産クラウドファンディングでは、いろいろな事業者が提供する複数の投資案件を「予定分配率」や「運用期間」、「先着順か抽選か」というようなさまざまな観点から比較検討することができます。
投資する時点における一番良い条件のファンドを見つけることができますので、ぜひLIFULL 不動産クラウドファンディングを活用して自分の希望にあったファンドを見つけてみてください。

LIFULL 不動産クラウドファンディング編集部
金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。