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ニュース・トレンド 2021.03.22

米国の中古不動産市場に学ぶこと

近年、日本では人口減少が進む中で「空き家」が大きな問題となっています。メンテナンスがなされずに朽ちていく住宅は周りの地域にも悪影響を及ぼします。これは日本の人口構造に根差した特有の問題でもありますが、持ち主が居なくなった、あるいは使わなくなった遊休不動産の需要を掘り起こし、もう少しスムーズに流通させる手はあるはずです。

目下、空き家問題には「空き家バンク」など、多くのプロジェクトが立ち上がっています。ここでは、なぜ日本の空き家は流通しないのかという疑問を米国の中古住宅市場と比較しながら考えてみたいと思います。

米国の中古住宅流通市場

USCB(アメリカ合衆国国税調査局)の直近の調査によると、米国の中古住宅販売件数と新築住宅販売件数を比べると新築は中古のおよそ10%台前半の数字となっています。

最近でこそ、日本でも中古マンションを購入してリフォームすることがポピュラーになってきましたが、それでも他国に較べると、以下のグラフにあるように、圧倒的に新築住宅の比率が多くなっています。これには日本人の新築志向や、他国の建築規制の厳しさなどの背景に加えて、日本の中古住宅の流通市場(セカンダリマーケット)が十分に発達していないことが大きく関係しているのではないでしょうか。

米国の住宅セカンダリマーケット

米国では特に需要(買い手)の厚みがセカンダリマーケットの流動性を支えています。米国の不動産市場は基本的に開かれていて、必要な段取りを踏めば外国人や非居住者でも自由に不動産を取得することが可能です。そのため、利回りを求めて世界から投資家の資金が集まります。また、特に南部において顕著な、移民の流入による住宅の需要は年々膨らんでいます。一方、新築市場とは異なり、中古住宅供給の弾力性には限りがあり、主に売り手側のマーケットの見通しや景況感などによっても在庫は変動します。

全米不動産協会(National Association of Realtors, NAR)によると昨年の中古住宅販売件数は564万戸と2006年以来の高水準でした。12月に販売された住宅の中間価格は309,800ドルと前年同月比12.9%上昇して統計開始以来の過去最高値を記録、在庫は同23%減少して2カ月分程度の107万戸と過去最低の水準となりました。その背景には、まず、コロナ対応の金融・財政政策が初回の住宅購入者のファイナンスを容易にしたこと、そして、リモートワークが常態となり、都会から離れた郊外にスペースのある家を求める購入者が増加したことがあります。つまり、皮肉にもコロナが生み出した更なる需要が供給を上回って価格が上昇しているのです。

オンライン不動産ポータルの登場・・・MLS、Redfin、Zillow

さて、米国の住宅セカンダリマーケットでは、実際にどのように取引が行われているのでしょうか。 

NARの調査によると、購入者に対するアンケートでは、家探しの手段として52%がインターネットを挙げ、次に29%が仲介業者経由と回答しています。一方で、売り手側は知り合いを介して仲介業者に依頼したという回答が41%、購入時の業者等、知己の仲介業者に任せた人が26%と、売り手側は当然ながら、属人的なつながりの信用できる仲介者を選ぶ傾向があります。

仲介業者について見てみると、全米で200万人ほどの不動産ライセンス保有者が活動しており(ちなみに、日本の宅建士登録者数は100万人程度)、ライセンス保有者であるリアルターの64%が女性、全体の平均年齢は55歳だそうです(一般財団法人不動産適正取引推進機構によると、日本の宅建士証交付者における女性割合は25%ほど、平均年齢は51.5歳)。

リアルター全体の7割以上が業務でSNSを利用しており、最も有用なツールとして、まずはMLS(Multiple Listing System)、次にキーボックスおよびスマートキー、そしてSNSプラットフォームを挙げています。比較的年齢層の高い業界にも関わらず、マーケティングツールの電子化はかなり普及していることが分かります。

彼らが駆使する中心的な不動産ポータルサイト「MLS」は各地域の不動産業者組合などにより別個に運営されていて、加入の手続きには多少手間がかかるものの、システムのデータやAPIなどの運用は画一化され、幅広い連携が容易になっています。また、仲介を行った業者は全ての情報をMLSに登録することが義務づけられますので(日本との違いです)、業者間のみならず買い手に対しても透明な情報がリアルタイムで提供されます。

たとえば、日本の投資家がテキサス・オースティンの家を買いたいと思った時、その住所さえ分かれば、ポータル上で過去の取引履歴、差押えの履歴や固定資産税額などのパブリックレコードをオンラインで確認することができますし、売却した際には、タイトル(登記)の移転が完了したことをオンラインで確認することもできます(されていないと延々納税通知が届きます)。

その他の不動産ポータルサイトには、このMLSに接続しているRedfin、直接接続を行っていないZillowやTruliaなどがあり、それぞれ使い勝手に特徴があります。

取引の実際―エスクローエージェントの存在

米国の不動産取引において特徴的な仕組みに「エスクロー」があります。売り手と買い手の間で決済処理を執り行う第三者機関で、タイトルの変更を行い、買い手から預かった約定代金から固定資産税や光熱費の日割り計算分や諸手数料を差引いた金額を売り手に支払います。この仕組みによって片側不履行という事態が防がれます。エスクローエージェントとして営業するには免許が必要で、一定の額を預託して信用を担保することが必要です。

日本法下には信託スキームがありますが、不動産の売買契約においては依然として当事者、司法書士や仲介業者など一同が銀行に会して契約を履行する慣行が続いています。ちなみに、ECサイトの普及に伴いエスクロー機能の必要性が高まったことから、資金移動業者として登録を行えば、100万円を上限にエスクローのサービスを提供できるようになっています。

まとめ

米国の不動産セカンダリマーケットの広がりは、そもそもの需給や仕組みがベースにあり、2000年代に入ってからのオンライン化が後押ししたといえるでしょう。

日本においても、今では賃借人の6割ほどがオンラインで部屋を探していると言われ、既にIT重説も解禁されています。売買取引のIT重説もこの4月から本格運用されることが明らかになりました(国交省:ITを活用した重要事項説明に係る社会実験に関する検証検討会)。事前に書面での交付義務のある「重要事項説明書」などを電子化するサンドボックス実験も3月から開始される予定です。

不動産売買契約の電子化が進めば、契約にかかるコストの低下や効率化が進み、日本でも低価格の中古住宅流通市場に流動性が出てくるのではないでしょうか? 

今後の進展を期待したいと思います。

LIFULL不動産クラウドファンディング編集部
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