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ニュース・トレンド 2021.02.16

世界のSTOはどうなっているか―米国、スイス、英国

デジタルテクノロジーの発展と共に資金調達の手段にも変化が生まれています。特に中小企業やスタートアップ企業は、これまで直接金融やベンチャーキャピタルからの調達以外手段は限られていましたが、近ごろはクラウドファンディング、ICO(Initial Coin Offering)、STO(Security Token Offering)といったオンライン上で行われる私募スキームが次々に登場しています。
中でも注目されるSTOは、昨年日本でも法律的な枠組みが整理され、新しい試みが実行に移されつつあります。私たちLIFULLも不動産分野でSTOスキームの提供を開始し、今後のマーケットの広がりに貢献したいと思っています。

これらBLT(Blockchain Ledger Technology)を使ったファイナンスは、スマホ一つで投資家にリーチ可能なインフラ面のハードルの低さや取引の効率性から、先進国のみならず新興国においても広がりつつあります。

ここでは、主要な金融センターにおけるSTOへのアプローチを見てみたいと思います。

米国:ICOからレギュレーション準拠のSTOへ

米国における暗号技術は、大項目の「クリプトカレンシー」の下に、①ペイメントトークン(日本では暗号資産)、②ユーティリティトークン③デジタルアセット(セキュリティトークン)があります。

昨年末、米証券取引委員会(SEC)がクリプトカレンシーXRPを運営するリップル社を提訴したことが話題になりましたが、以前にも、ペイメントトークンなのかデジタルアセットなのかで争う複数のケースがありました。

2017~2018年にはこれといった規制のない中でICOがブームとなり、体制が不十分な詐欺的なケースも多かったと言われています。ICOはスタートアップ企業にとって、容易に資金が集められる魅力的な仕組みでしたが、発行するトークンが「有価証券」に該当すれば、証券取引法上の一定の規制が及ぶことになり、安易な発行が難しくなったのです。こうして発行側も慎重になり、発行額は2018年をピークに減少に転じています。

「有価証券」に当たるかどうかは、その発行形態に関わらず、2016年のDAO事件の際に最高裁判例で示された「Howey Test」により判断されます。その基準とは、➀お金の投資か②投資先から収益が見込めるか③投資先は共同事業か④第3者の仕事により利益が見込まれるか、の4項目です。FacebookのLibra(現Diem)も当初はこの基準に照らして有価証券と判断されました。

ICOに代わって注目を浴びることとなったのがSTOです。同じBLTでも、株、債券、不動産等の資産に対する権利を表示するものとしてトークンを発行し、資金を調達するSTOは規制に準拠した資金調達手段として、今後、スタートアップによる利用が更に増えていくと考えられます。

オバマ政権下の2012年、中小、新興企業の資金調達を容易にする目的でいわゆるJOBS法が制定され、これら企業が証券の発行、売出しを行うに当たり、一般的勧誘を行う場合においても一定の条件に準拠することによりSECへの登録が免除される道が開かれました。今のところ、STOによるインターネット上の資金調達においては、SECに事前に登録を行うことはせず、レギュレーションDに準拠して私募発行するケースが多く見られます。

主なレギュレーションには、上記のレギュレーションDの506(c)(発行額の上限なし、発行体が投資家の適合性チェック義務を負い、いわゆるリスク許容適格投資家のみを対象とし、ロックアップ期間がある)や、レギュレーションクラウドファンディング(登録ポータルまたはブローカーディーラーを通して募集、12か月間で107万ドルが上限)などがあります。不動産を裏付にしたSTOのプラットフォームにはSecuritize社、STOの取引所にはtZero ATSなどがあります。

スイス:金融立国スイスでは実質的に有価証券か決済手段かがポイント

スイス金融市場調査局(FINMA)による暗号技術の分類は、クリプトアセットの下に、①ペイメントトークン②ユーティリティトークン③アセットトークン、となります。

米・英でいうセキュリティトークンは③のアセットトークンに分類され、発行体により約束された将来的なキャッシュフローの分配を受ける権利を表象し、ブロックチェーン上で取引可能なものを意味します。

スイス市場において、アセットトークンは基本的に有価証券と定義されます。アセットトークンの発行について、集団投資スキームによる場合や、株式市場に上場する場合、デリバティブ商品、仲介業者による取引などを除いて、今のところ監督機関の許可を得ることは義務付けられていませんが、一定の例外(※)を除いた公募の際には目論見書を公開する必要があります。

したがって、STOについても公募であれば、目論見書の公開が必要です。

また、STOの発行体自体にはKYC(取引時の本人確認)やAML(アンチマネーロンダリングチェック)の義務は課されていないものの、仲介業者による取引においてペイメントトークンが決済に使われる場合などの資金の移動にはAML法による規制対象となります。

押し並べて、スイス当局は金融におけるクリプト技術の促進に前向きでありつつ、アマチュア一般投資家向けの商品については規制をかけるスタンスのようです。

スイスの大手プラットフォームであるBlockStateによると、これまでのスイスにおけるSTO件数は14件と、北米の34件に次いで2番目に多くなっています。

ちなみに話がそれますが、金融立国スイスは欧州の真ん中に位置しながら独自のスイスフランを維持しているばかりか、1934年以来、WIRという地域通貨を持っています。

(※)プロ投資家のみが対象、投資家数が500人未満、1投資家の出資額が10万スイスフラン以上、発行単位が10万スイスフラン以上、12カ月間の発行総額が800万スイスフラン以下

英国:マーケットとの対話路線

英国における暗号技術の分類は、クリプトアセットの下に、①エクスチェンジトークン(欧米で言うところのペイメントトークン)、②ユーティリティトークン③セキュリティトークン、となります。

一般的に世界の金融センターを冠する英国の金融当局のスタンスはライト・タッチといわれ、市場との対話を重視した柔軟なスタイルが特徴です。

2013年にFSAから分離した金融行為監督機構(FCA)がSTOも含めた新しい金融商品の監督を行う一方で、規制サンドボックス制度を通してイノベーティブなサービスの実証実験を後押ししています。2018年にはグローバル投資プラットフォームのTokenMarket 社が選ばれ、最初のSTOを行いました。また、Archax社はFCAの認可を受けてデジタル証券取引所を開設しています。

STOの発行に際しても、募集対象を適格投資家に限る場合や、各投資家からの出資が10万ユーロ以上である場合、英国内での発行総額が800万ユーロを超えないなどの条件を満たしていれば、目論見書の公開が免除されています。AMLに関する考え方は上述のスイスと同様、発行に関しては適用がありませんが、仲介業務に関しては確認義務があります。これらの方針はBrexitを経て、将来的にはEUの基準から独自に修正されていく可能性はあります。

ちなみに、アセットマネジメント会社により運用される暗号資産を組込んだ投資商品(ETN、ETC、ETP)の預り残高は2020年の1年間で5倍に膨らみ、23億ユーロに達した模様で、この急拡大を受け、FCAは一般投資家に向けた警告を発しています(※)。

また、FCAはAML/CFTの監督も兼ねることとなり、クリプトアセットを取り扱う全ての事業者に登録義務を課し、本年1月21日以降、未登録のビジネスは継続不可となりました。

(※)FCAによる警告: https://www.fca.org.uk/consumers/high-return-investments

まとめ

ここまで見てきたように、各国当局のSTOに対するアプローチには少しずつ差がありますが、「中小企業・スタートアップの資金調達の後押しと金融イノベーションの促進」、および「投資家の適切な保護」という二つの大目標は共通しており、どちらにより軸足を置くかという点で特徴づけられるようです。今のところはプロ投資家や富裕層に特化したレギュレーション準拠の私募がほとんどではあるものの、そのアプローチも技術の発展や社会情勢と共に微調整されていくことでしょう。

引き続き世界の動きにも目を向けて行きたいと思います。

LIFULL不動産クラウドファンディング編集部
この記事を書いた人

LIFULL不動産クラウドファンディング編集部

金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。

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