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ニュース・トレンド 2021.02.16

オンラインで不動産の小口取引―セキュリティトークンの可能性

米国でバイデン大統領が誕生した1月、ビデオゲームの販売会社GameStop株の急騰が話題になりました。ヘッジファンドによる同社株の空売りに対して、投稿サイトRedditの投資掲示板に集まった個人投資家たちが一丸となってショートをスクイーズ、株価は9日間で1800%以上急騰し、ヘッジファンドが損切りを余儀なくされるという驚きの事件が起こりました。
金融エスタブリッシュに反発する若者のムーブメント「Occupy Wall Street」にオンラインゲーム的要素が加わって、同社株に個人の買いが殺到し、ヘッジファンドに損失を与えたのです。背景には様々な憶測がありSECも調査に入ったようですが、手数料無料の株取引アプリ「Robinhood」に小口投資資金が集結し、相場を動かしたことは事実です。

このような個人投資家群が相場に大きな影響を与える例は以前にもあり、FXマーケットのMrs.ワタナベは円売り圧力として一世を風靡しました。株式もFXも定型化しやすい商品であるためにオンライン取引に馴染みやすく、いち早く個人がスマホから手軽にトレーディングできるようになりました。

更に一歩進んで、オンラインがデファクトになった今、定型化や小口化することが容易でない不動産などの資産クラスにおいても変化が起こっています。クラウドファンディングによる一般公募に加えて、持分を「トークン化」することによって二次流通を可能にする場も誕生しています。

ここでは不動産の小口化の経緯とトークン化による二次流通マーケットの可能性について見ていきたいと思います。

不動産の小口化の始まりー米国

米国では、1980年代後半にS&L(貸付組合)が破綻すると、その後処理の過程でREIT(Real Estate Investment Trust)やCMBS(Commercial Mortgaged Backed Security)などの不動産に関する権利の証券化の手法が多々編み出されました。これらはセカンダリ市場で流通する有価証券としてSECの監督下にあります。

今ではREITは市場規模1.1兆ドルほどの巨大なマーケットに成長しています。JREITが賃貸事業への投資に限られているのに対して、米国ではHUD(住宅都市開発省)による税制面の優遇措置が利用できるなど、運用の自由度も高く、401Kを通して個人投資家にもおなじみの資産クラスとなっています。

2010年代に入ると、インターネット上の不動産プラットフォームが登場します。代表的なFundriseはクラウドファンディングによる商業不動産や住宅への小口投資eREIT、eFundを提供しています。同プラットフォームが行った2015年のワールドトレードセンター跡地のワンワールドタワープロジェクトは投資家の注目を集めました。同社によると、これまでの取引総額は50億ドル近く、投資家数も13万人に上るとそうです。

運営会社であるFundrise LLCはSECに投資アドバイザーの登録を行っており、コンピューターモデルに基づいた助言に対して購入資産の0.15%と安価な手数料を売り物にしています。いわゆる私募(Regulation D)の他、一般公募(Regulation A)による募集も取り扱っています。

さらに最近になると、不動産の持分を表象するトークンを発行して投資家から資金を集めるSTO(Security Token Offering)のプラットフォームも誕生しています。

2019年にReal Token Inc.がローンチした「RealT」では既に10億ドルほどの取引が成立しています。例えば、デトロイトのとある中古住宅に固有のLLCを通して50ドル程度から投資することが可能で、その持分に応じてERC20準拠のトークンが発行されます。対象不動産は現地の管理会社により管理されるので、投資家は単にそのトークンに基づいた賃料(米ドルペッグのステーブルコイン)が口座に振り込まれるのを確認するだけでOKです。また、対象物件の管理方針について、投票(ボーティング)の権利も付与されます。

かつて日本の投資家の間でも、減価償却による節税狙いで米国の築深の中古住宅を購入し、賃貸運営をすることが流行りました。そこで直面する現地管理会社との煩わしいやりとりが一切ないというのであれば魅力的かもしれません。また、UniswapやAirswapなどのERC20準拠のアプリを介して、持分を売買することも可能です。

Real Token社は広告の相手方を一定の投資家に限ることで(Regulation D, S準拠)、ブローカーディーラーや投資アドバイザーとしてのSECへの登録を免除されています。こちらは、一部の国を除いて外国投資家も参加可能です。

不動産の小口化、トークン化に期待すること

株や債券は会社の生み出す利益や、会社への貸付の返済や利払いを受ける権利を「表象」したものです。日本では、かつて紙に印刷された株券や証書がその価値を表すものでしたが、現在は証券保管振替機構(保振)により、すでに電子的に管理されています。
不動産についてはどうでしょうか。前述の通り、米国ではDeed(権利証)のトークン化が既に始まっています。

日本では、現物不動産の第三者対抗要件は「登記」となりますが、その対象不動産を証券化、小口化する仕組みは、信託受益権や匿名組合出資持分などのいわゆるみなし有価証券となります。この信託受益権を主に利用したJREIT(不動産投資信託)は、東証に上場以来20年近くがたち、個人投資家の間でも気軽に購入できる資産クラスになりました。

そして、それより規模の小さいクラス、例えばマンションの区分所有、ホテルや保育園の開発案件などを小口化する取り組みについては、主に匿名組合の仕組みを使ったクラウドファンディングによって徐々にすそ野が広がってきています。

一方で、それよりも一段と小規模の地方の中古住宅、空き家などの不動産を更に小口化する試みには課題が多く残っています。ファンド設定の際に一案件ごとに固定で係る費用は、その案件が小規模であればあるほどネックになってしまいます。
そこでDLTを駆使して、その中間コストを抑え、偏在しがちな情報を透明化したり、取引の安全性を担保したりという不動産のトークン化の取り組みが始まっています。

先に述べた「みなし有価証券」は本来、流通性の低い有価証券を意味します。これらの権利が電子的に表示(トークン化)されることにより譲渡が容易になり、流動性が生まれます。改正金商法ではこれを「電子記録移転権利」と定義し、株や債権などのいわゆる一項有価証券と同じ扱いとしました。なお、一部の流通性の低いものについては、権利の移転範囲を限定することなどを条件に、電子記録移転権利から除外されています。現物不動産の権利のトークン化(STO)はその一つです。

まとめ

1980年代にREITから始まった不動産の証券化による小口化はオンライン、クラウドファンディングを経て、DLTにより次のフェーズに突入しました。トークンに持分を紐づけることにより、投資家の安心・安全と発行側の効率性が担保され、日本においても中古住宅流通市場が活性化していくことが期待できます。そして、日本の地方創生の大きな原動力になっていくことでしょう。
私たちLIFULLも中古不動産の流通市場の広がりを後押しするため、クラウドファンディングに取り組む事業者の皆さんにSTOスキームを提供しています。

近い将来、セキュリティートークンマーケットがREIT立上げ時のように数千億円規模まで膨らみ、オンラインならではのトークンのクロスボーダー取引が活発になっていくことを期待しています。

LIFULL不動産クラウドファンディング編集部
この記事を書いた人

LIFULL不動産クラウドファンディング編集部

金融分野全般に視野が広いライターと、不動産クラウドファンディングに精通した校閲メンバーにて構成。投資家目線のわかりやすい記事を届けることをモットーに、不動産クラウドファンディングを中心とした投資お役立ち情報をお届けします。

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